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ミリプラチンによる粘液水腫

2021年8月掲載

薬剤 ミリプラチン腫瘍用薬
副作用 粘液水腫
概要 80歳、男性。C型慢性肝炎に対し、13年前にPEG-IFNα-2a+リバビリン併用療法にてSVRであった。当院での年1回の腹部超音波検査にて肝細胞癌が見つかった。気管支拡張症、右胸水及びCKDの合併と高齢であることから、ミリプラチン+ゼラチンスポンジにてTACEを選択した。ミリプラチンとリピオドールの局所滞留は良好であった。約1ヵ月後より息切れ、咳嗽が出現。喘鳴、全身浮腫のため、TACE後41日目に再入院した。当初は薬剤性肺障害を疑いプレドニゾロンを開始したが、一時的な効果しかなく漸減した。MAC症を疑い抗結核剤を開始したが、全身浮腫が悪化していった。TSH:357.91μU、FT4測定感度以下などがわかり、粘液水腫と判明した。レボチロキシン開始により、FT4は徐々に正常化した。TSHも徐々に減少し、MAC症の治療及びプレドニゾロンも中止し、呼吸器症状及び浮腫は改善しつつある。

監修者コメント

ミリプラチンは肝細胞癌に対する肝動脈化学塞栓療法 (TACE) に用いられる抗がん剤である。本症例は、本剤によるTACE後に、重症の甲状腺機能低下症により生じる粘液水腫を発症した稀な1例である。過去のIFN投与歴やヨード製剤であるミリプラチン懸濁液の投与が粘液水腫の発症に関与した可能性が考えられる。

著者(発表者)
中村博式ほか
所属施設名
JA岐阜厚生連岐阜・西濃医療センター揖斐厚生病院
表題(演題)
肝細胞癌に対しミリプラチンによるTACE施行後、粘液水腫を発症した1例
雑誌名(学会名)
第243回 日本内科学会東海地方会 42 (2021)
第243回 日本内科学会東海地方会(2021.2.14)

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