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レボドパ・カルビドパ水和物による下垂体性甲状腺機能低下

2021年7月掲載

薬剤 レボドパ・カルビドパ水和物中枢神経用薬
副作用 下垂体性甲状腺機能低下
概要 71歳、男性。パーキンソン病で3年前からレボドパ・カルビドパ水和物を内服していた。3ヵ月前より慢性下痢症状あり、採血にてTSH、fT4値の低下を指摘され当科に紹介された。二次性甲状腺機能低下症が疑われ、精査目的で入院した。
倦怠感や意欲の低下はなく、眉毛脱落もない。下腿の体毛は若干薄い。浮腫なし。頭部MRIにて下垂体に明らかな占拠性病変・異常信号域を認めなかった。TRH/CRH/LH-RH三者負荷試験でTSHは前値0.436μU/mL、後値30分3.280μU/mL、60分2.47μU/mLと低値に留まり、分泌不全があると判定した。ACTH/コルチゾールは前値、頂値とも正常範囲内で、蓄尿尿中コルチゾールは68.1μg/dayであり副腎不全も否定的であった。レボチロキシンナトリウム水和物を処方し退院とした。
他の下垂体ホルモン分泌に大きな異常を認めず、器質的な疾患も認めなかったことから、レボドパによるTSH分泌抑制が考えられた。

監修者コメント

パーキンソン病に対するレボドパ・カルビドパ水和物の投与中に下垂体性甲状腺機能低下を来した1例である。脳内のドパミン作動系は視床下部-下垂体-甲状腺軸に連結しており、ドパミンが甲状腺刺激ホルモン (TSH) を抑制することで、甲状腺ホルモンの合成・分泌を低下させることが知られている。本症例も、パーキンソン病治療のためのレボドパ投与による二次性甲状腺機能低下症が考えられる。補充にあたってはACTH分泌などの他の下垂体ホルモンの評価を行うことが重要である。

著者(発表者)
窪田珠理ほか
所属施設名
帝京大学溝口病院第四内科
表題(演題)
パーキンソン病治療中に下垂体性甲状腺機能低下を来した1例
雑誌名(学会名)
第666回 日本内科学会関東地方会 25 (2021)
第666回 日本内科学会関東地方会(2021.2.7)

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