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パクリタキセルによるACTH単独欠損症

2014年1月掲載

薬剤 パクリタキセル腫瘍用薬
副作用 ACTH単独欠損症
概要 75歳、男性。多発リンパ節転移を伴う進行胃癌に対し幽門側胃切除術と術後補助化学療法が施行された。1年後に大動脈周囲リンパ節腫大を認め、リンパ節再発と診断。パクリタキセル週1回投与が開始されたが、7コース第4週目頃より全身倦怠感、下痢、白血球減少、好中球減少を認めたため入院となった。入院後低ナトリウム血症が出現し、高張尿・低浸透圧尿を認めたことから、SIADHを疑い塩分負荷、水制限を開始した。内分泌精査にてACTHの感度以下への低下、および血清コルチゾールの高度低下を認め、ACTH以外の下垂体ホルモンの上昇、視床下部ホルモンの上昇を認めたことから、ACTH単独欠損症と診断。ヒドロコルチゾンの投与を開始したところ、臨床症状および電解質異常は徐々に改善し、3週間後に退院となった。

監修者コメント

本症例では、胃がん術後再発に対して、パクリタキセル(タキソール®)の投与を開始したところ、全身倦怠感、低ナトリウム血症、高張尿・低浸透圧尿などを認めた。当初 SIADHが疑われたが、諸検査によりACTH単独欠損症と診断された。ACTH単独欠損症の発症機序は十分に解明されておらず、本症例のように化学療法中に発症した例は稀であるが、抗がん剤投与時に低ナトリウム血症を認める際にはACTH単独欠損症も念頭に置く必要がある。

著者(発表者)
東野信之介ほか
所属施設名
金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科
表題(演題)
胃癌術後再発に対するパクリタキセル週一回投与療法中に続発性ACTH単独欠損症を発症した一例
雑誌名(学会名)
日本臨床外科学会雑誌 74(増刊) 891 (2013.10)
第75回 日本臨床外科学会総会 (2013.11.21-23)

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