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イソニアジドによる酩酊感

2014年1月掲載

薬剤 イソニアジド化学療法剤
副作用 酩酊感
概要 55歳、男性。5年前より糖尿病性腎症で血液透析中。3年前より不明熱を認めていた。精査にて臨床的に肺結核と結核性リンパ節炎が疑われ、診断的治療として、イソニアジド(INH)、リファンピシンおよびエタンブトールが開始された。速やかに解熱傾向となり、抗結核薬は有効と考えられたが、内服開始3日目より酩酊感・嘔気が出現した。頭部CT検査や髄液検査では異常を認めず、抗結核薬による副作用が疑われたため、抗結核薬を中止した。内服中止により症状は改善したが、INHの再投与により酩酊感が出現した。INH再投与時の血中トラフ濃度測定を行ったところ、INHとアセチルイソニアジド(AcINH)は健常人のピーク濃度に近い値で蓄積しており、本症例でのピーク値はさらに高値であったと推測された。

監修者コメント

本症例では糖尿病性腎症で血液透析中に、肺外病変を伴う肺結核を発症し、抗結核薬の内服を開始したところ、酩酊感が出現した。抗結核薬の休薬後、イソニアジド(イスコチン®)の再開により症状が再燃したことから、原因薬剤としてイソニアジドが考えられた。イソニアジドは肝代謝であるため腎機能低下患者や血液透析中の患者でも健常人と同用量の投与が可能とされているが、本症例ではイソニアジドが高濃度に蓄積されたため酩酊感を呈したと考えられた。血液透析患者に対してイソニアジドの減量は不必要とされるが、症例により個体差があるため、注意が必要と考えられる。

著者(発表者)
齊木雅史ほか
所属施設名
山梨県立中央病院呼吸器内科ほか
表題(演題)
肺外病変を伴う肺結核に対してイソニアジドを使用し、酩酊感が出現した慢性腎不全の1例
雑誌名(学会名)
結核 88(10) 703-708 (2013.10)
第162回 日本結核病学会関東支部学会、第201回 日本呼吸器学会関東地方会

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