せりみっく 今月の症例

ホーム > 新着文献  > ペグフィルグラスチムによる大動脈炎

ペグフィルグラスチムによる大動脈炎

2020年9月掲載

薬剤 ペグフィルグラスチム血液・体液用薬
副作用 大動脈炎
概要 65歳、女性。膵尾部癌に対して膵体尾部切除術を施行し、術中網嚢内の膵下縁近傍に播種結節を1つ認めた。洗浄細胞診は陰性であり、合併切除した。病理結果は中分化管状腺癌で、術後化学療法としてS-1内服を継続していた。術後2年2ヵ月で肝転移を認め、mFOLFIRINOX療法を開始した。予防的にペグフィルグラスチムを皮下注射したが8日後に発熱があり、血液検査で炎症反応の上昇を認め、造影CTでは大動脈弓部周囲に軟部影を認め、大動脈炎と診断した。感染症は否定できず、抗生剤治療を行い症状は改善した。改善後1ヵ月で治療を再開し、mFOLFIRINOX療法を8コース、ペグフィルグラスチムの投与を8回行った。8回目の投与6日後に発熱、左側腹部痛を認め、造影CTで胸部下行大動脈瘤周囲に軟部陰影を認めた。大動脈炎の診断で、前回と同様の抗生剤治療で改善した。抗核抗体やウイルス検査は陰性であり、自己免疫疾患や感染症の関与は否定的で、ペグフィルグラスチムによる薬剤性の大動脈炎と考えられた。

監修者コメント

悪性腫瘍に対する化学療法の施行中は、発熱性好中球減少症の予防のために、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)製剤の投与が推奨されている。本症例は、膵癌に対するmFOLFIRINOX療法中に予防的にペグフィルグラスチムを投与したところ、大動脈炎を発症した1例である。本薬剤の添付文書にも、重大な副作用として、大型血管炎が記載され、注意喚起されている。G-CSF製剤の投与中に原因不明の発熱や炎症反応などを認めた場合には、大型血管炎の合併も考慮し、投与を中止するなどの適切な処置を行う必要がある。

著者(発表者)
宮﨑健人ほか
所属施設名
東北大学大学院医学系研究科・外科病態学講座・消化器外科学分野
表題(演題)
膵癌化学療法中に顆粒球コロニー刺激因子製剤による大動脈炎を発症した1例
雑誌名(学会名)
癌と化学療法 47(5) 851-853 (2020.5)

新着文献 一覧

PAGETOP