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クロザピンによる全身けいれん発作、腰椎圧迫骨折、下肢麻痺、膀胱直腸障害

2020年4月掲載

薬剤 クロザピン中枢神経用薬
副作用 全身けいれん発作、腰椎圧迫骨折、下肢麻痺、膀胱直腸障害
概要 30代、男性。過去にクロザピンで皮疹の可能性を指摘されたが、DSLTは陰性であった。治療抵抗性の統合失調症に対し、クロザピンを慎重に再開し、4週毎に脳波を確認していた。500 mg投与中の脳波では、徐波に加え棘徐波が頻回に出現したが、発作はみられなかった。精神症状改善のため600 mgまで増量したところ、全身けいれん発作が約30秒生じた。350 mgに減量したものの、腰痛と両下肢運動低下が出現し、胸腰椎CTで胸椎骨折とL4椎体骨折を認めた。胸腰椎MRIで脊髄の圧迫像、椎体にSchmorl結節を複数認め、骨折への軟弱性が確認され、膀胱直腸障害も発覚した。その後、床上安静中に下肢静脈血栓ならびに肺塞栓症も併発した。レベチラセタム1000 mgを開始し、脳波上、棘徐波はほぼ消失し、発作の再発もなく、精神状態も安定した。

監修者コメント

クロザピンは治療抵抗性統合失調症に対する治療薬として用いられているが、脳波異常やミオクロニー発作、強直間代発作などの副作用も報告されている。本文献では、治療抵抗性統合失調症に対してクロザピンを投与したところ、全身けいれん発作を発症し、脊椎骨折、両下肢麻痺、膀胱直腸障害をきたした稀な一例を報告している。本薬剤は治療抵抗性統合失調症の重要な治療手段であるが、本症例のような重篤な有害事象を併発することがあるため、投与中は慎重な経過観察が必要である。

著者(発表者)
岩瀬真生ほか
所属施設名
大阪大学精神医学教室ほか
表題(演題)
クロザピンにより誘発された全身けいれん発作により腰椎圧迫骨折、両下肢麻痺、膀胱直腸障害をきたした治療抵抗性統合失調症の一例
雑誌名(学会名)
てんかん研究 37(2) 613 (2019.9)
第53回 日本てんかん学会学術集会 (2019.10.31-11.2)

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