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リトドリン塩酸塩による胎児発作性上室性頻拍

2020年4月掲載

薬剤 リトドリン塩酸塩中枢神経用薬
副作用 胎児発作性上室性頻拍
概要 36歳、2妊0産。妊娠28週0日より切迫早産に対しリトドリン塩酸塩(リトドリン)20mg/日の内服を開始したところ、妊娠28週1日、胎児に発作性上室性頻拍を認めた。胎児水腫や明らかな心構造の異常を認めず、母体の血液検査と心電図からも子宮内感染や甲状腺機能亢進症による頻脈ではなく、リトドリンによる副作用が考慮され、内服を中止した。その後4日間にわたり一過性の胎児不整脈を認められたが、持続は数分間にとどまり、心不全徴候も認めなかった。妊娠29週3日以降は胎児不整脈の出現を認めず、切迫早産に関しては安静加療のみで経過し、妊娠36週5日経腟分娩に至り、出生後の児に不整脈を認めなかった。

監修者コメント

リトドリンは切迫早産に対して本邦で第一選択薬として広く用いられている薬剤であるが、母体・胎児に対する様々な副作用が報告されている。本症例は、切迫早産に対してリトドリンの内服を開始したところ、胎児に発作性上室性頻拍を認めた1例である。内服中止後も4日間にわたり一過性の胎児不整脈が認められており、羊水中に移行したリトドリンが長期的な作用を起こした可能性が示唆されている。本薬剤は十分にリスクを考慮した上で使用し、投与後は慎重な経過観察を行うことが重要である。

著者(発表者)
山極和貴ほか
所属施設名
国立国際医療研究センター病院産婦人科
表題(演題)
リトドリン塩酸塩内服開始後,胎児に発作性上室性頻拍をきたした1例
雑誌名(学会名)
東京産科婦人科学会会誌 68(4) 686-689 (2019.10)
第390回 東京産科婦人科学会例会

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