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炭酸リチウムによる甲状腺機能亢進症

2020年4月掲載

薬剤 炭酸リチウム中枢神経用薬
副作用 甲状腺機能亢進症
概要 61歳、男性。41歳頃から抑うつと軽躁を繰り返し、10年以上炭酸リチウムを内服していた。比較的安定した経過を辿っていたが、数ヵ月前から不安焦燥、動悸を認め体重が3ヵ月間に60 kgから54 kgまで減少した。炭酸リチウムの血中濃度も適正範囲内であったため継続投与とし薬剤調整も行ったが改善に乏しく、入院となった。採血検査ではTSH 0.019μIU/mL、FT3 15.7 pg/mL、FT4 5.07 ng/mLと甲状腺機能亢進症を認めた。サイログロブリンも異常高値であったが甲状腺エコーでは明らかな異常はなく、バセドウ病や亜急性甲状腺炎も否定的であり、治療歴から炭酸リチウムによる無痛性甲状腺炎と診断された。その後炭酸リチウムを中止したところ、入院から約2ヵ月で不安焦燥、動悸、体重減少は改善し、甲状腺ホルモンの値も正常化した。

監修者コメント

本症例は、双極性感情障害に対する炭酸リチウムの長期内服中に甲状腺機能亢進症を認めた1例である。双極性感情障害において炭酸リチウムの有効性は広く知られており、慢性的な投与により甲状腺機能低下症を認めるという報告はあるが、甲状腺機能亢進症についてはほとんど報告がない。頻度は少ないものの、本薬剤の有害事象として甲状腺機能亢進症が発症する可能性についても注意が必要である。

著者(発表者)
鈴木洋久ほか
所属施設名
昭和大学横浜市北部病院ほか
表題(演題)
炭酸リチウム長期内服中に甲状腺機能亢進症を認めた双極性感情障害の1例
雑誌名(学会名)
神奈川医学会雑誌 46(2) 234 (2019.7)
第170回 神奈川県精神医学会 (2019.2.16)

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