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冷生食による徐脈性不整脈、心静止

2020年2月掲載

薬剤 生理食塩水血液・体液用薬
副作用 徐脈性不整脈、心静止
概要 85歳、男性。右肺上葉S2末梢の充実性結節に対し、組織診断目的に経気管支肺生検を施行した。検査中、バイタルサインなど特に問題なく経過していたが、止血目的に冷生食(5mL)を注入した直後から洞性徐脈を来した。硫酸アトロピンを投与するも効果乏しく最終的に心静止に至ったが、胸骨圧迫とアドレナリンの投与にて速やかに心拍は再開した。翌日の冠動脈造影検査では器質的狭窄を認めず、アセチルコリンを用いたspasm誘発テストは陽性を示した。また、検査中の低酸素は認めず、総出血量は30mL程度、リドカイン投与量も3.0mg以下と過剰とはいえず、これらの関与は否定的だった。以上の経過と異型狭心症による失神の既往があることから、徐脈性不整脈の原因として、冷生食の寒冷刺激により誘発された冠動脈攣縮が強く示唆された。

監修者コメント

本文献では、経気管支肺生検後の止血処置として冷生食を注入した直後に、徐脈性不整脈から心停止に至った稀な一例を報告している。徐脈性不整脈の原因として、冷生食刺激により誘発された冠動脈攣縮が強く示唆されている。気管支鏡検査における止血処置として、冷生食は簡便かつ安全と考えられ、広く使用されているが、特に異型狭心症などの冠動脈攣縮のリスクがある患者においては、重篤な不整脈などが誘発される可能性があり、注意が必要である。

著者(発表者)
西山裕乃ほか
所属施設名
名古屋市立大学病院呼吸器・アレルギー内科ほか
表題(演題)
気管支鏡検査中の冷生食による止血処置で徐脈性不整脈から心静止に至った1例
雑誌名(学会名)
気管支学 41(4) 397-400 (2019.7)
第40回 日本呼吸器内視鏡学会学術集会 (2017.6)

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