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ブチルスコポラミンによるKounis症候群

2020年2月掲載

薬剤 ブチルスコポラミン末梢神経系用剤
副作用 Kounis症候群
概要 50歳、男性。大腸ポリープに対する内視鏡的粘膜切除術のため入院中であった。大腸スコープ挿入後に検査を開始し、ブチルスコポラミン50 mgを注射した2分後より全身のしびれ感と呼吸苦を訴え、不穏状態となった。ただちに大腸スコープを抜去するも経皮的酸素飽和度が80%まで低下し、気道の異常はないものの混合性アシデミアを認めた。また、12誘導心電図では下壁誘導でST上昇も認めた。検査終了後の血液検査で高感度トロポニンIが797.8 pg/mL、IgE-RISTがIU/Lと上昇し24時間でピークアウトしたことから、ブチルスコポラミン静脈注射により惹起されたKounis症候群(タイプI)と診断された。

監修者コメント

ブチルスコポラミンは、消化管のX線および内視鏡検査の前処置などに使用されている。本症例は、大腸ポリープに対する内視鏡的粘膜切除術時に静脈注射したブチルスコポラミンによりKounis症候群を発症した一例である。Kounis症候群とはアレルギー反応に伴い急性冠症候群をきたす疾患である。検査で汎用されるブチルスコポラミンによるKounis症候群は、海外も含め報告されたことはなく、貴重な症例といえる。

著者(発表者)
田中佑樹ほか
所属施設名
大阪府済生会野江病院救急集中治療科
表題(演題)
ブチルスコポラミンの静脈注射により惹起されたkounis症候群(タイプI)の一例
雑誌名(学会名)
日本救急医学会雑誌 30(9) 832 (2019.9)
第47回 日本救急医学会総会・学術集会 (2019.10.2-4)

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