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酢酸リュープロレリンによる奇異性脳塞栓症

2013年12月掲載

薬剤 酢酸リュープロレリンホルモン剤(抗ホルモン剤を含む)
副作用 奇異性脳塞栓症
概要 37歳、女性。子宮筋腫と子宮腺筋症に対して酢酸リュープロレリンによる治療が行われた。咳喘息による咳き込みを認めていたが、朝食中に突然、右口角と右母指のじんじんした感覚の異常が確認された。症状の改善なく当院脳神経外科を受診した。画像上直径15mm以下でかつ手口症候群を呈していたためラクナ梗塞と診断され、奇異性脳塞栓症の評価が必要となり当科紹介となった。各種検査結果から酢酸リュープロレリンによる奇異性脳塞栓症と診断した。入院時から抗血小板薬が投与されていたが、過多月経、貧血増悪を認めたため、すぐに中止となった。子宮筋腫と子宮腺筋症に対する手術治療のため、婦人科紹介となった。

監修者コメント

黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)誘導体である酢酸リュープロレリン(リュープリン®)の副作用として、低エストロゲンによる更年期様症状が一般的であるが、血栓塞栓症の副作用も報告されている。本症例では酢酸リュープロレリン内服後に感覚異常を認め、諸検査の結果、奇異性脳塞栓症と診断された。奇異性脳塞栓症は、静脈系で形成された血栓が卵円孔開存などの右-左シャントを介して動脈系へと流入し発症するとされている。本症例においても右-左シャントを伴う卵円孔開存と深部静脈血栓症を認めた。若年性深部静脈血栓症の原因として、凝固線溶系異常や自己免疫疾患などを認めず、酢酸リュープロレリンの関与が強く疑われた。同薬剤の副作用として、血栓塞栓症は知られているが、奇異性脳塞栓症は稀である。酢酸リュープロレリンを投与する際には副作用の1つとして本症も念頭に置く必要がある。

著者(発表者)
芳賀智顕ほか
所属施設名
医仁会中村記念病院循環器内科ほか
表題(演題)
酢酸リュープロレリンが原因と考えられた奇異性脳塞栓症の1例
雑誌名(学会名)
脳卒中 35(5) 364-368 (2013.9)

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