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マンニトールによる急性腎不全

2020年1月掲載

薬剤 D-マンニトール注射液循環器官用剤
副作用 急性腎不全
概要 46歳、男性。斜台部髄膜腫と診断され、全身麻酔下に開頭腫瘍摘出術が行われた。腫瘍のサイズが大きかったため、脳圧低下を目的に20%マンニトールを計900 mL(180 g)使用した。脳浮腫予防の目的で、ICU帰室後もマンニトールを継続投与したところ、術翌日から徐々に欠尿傾向となり、術後3日目には無尿状態となった(術中からのマンニトール総量は約3,600 mL、720g)。体幹部の浮腫および心エコーによる下大静脈径拡大と呼吸性変動の消失、右心拡大から循環血液量の増加が示唆された。血液、尿検査所見では低ナトリウム血症、尿CRE/血漿CRE<20、尿細管上皮(+)、潜血(+)、FENa>1.0 %、BUN/CRE<20などの結果が得られ、また血清クレアチニン値が基準の3倍以上、12時間以上の無尿状態であったことから、腎性の急性腎障害(KDIGO分類、ステージ3)の診断となった。
持続血液濾過透析を導入し、腎機能の改善とともに尿量も増加、術後9日目に一般病棟に転出した。

監修者コメント

浸透圧利尿薬であるマンニトールは、脳圧降下などの目的で広く使用されている薬剤である。本症例は、マンニトールの関与が疑われた急性腎不全の一例である。本薬剤の添付文書にも重大な副作用として、急性腎不全が記載されている。
腎機能障害の詳細な機序は不明であるが、腎輸入細動脈のスパズムや尿細管細胞の変性を投与量依存性に引き起こすとの報告がある。安易なマンニトールの多用には注意が必要である。

著者(発表者)
足立国大ほか
所属施設名
一般財団法人 脳神経疾患研究所附属総合南東北病院麻酔科
表題(演題)
マンニトールの関与が疑われた急性腎不全の1症例
雑誌名(学会名)
臨床麻酔 43(7) 957-960 (2019.7)
第38回 日本臨床麻酔学会大会 (2018)

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