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臭化ブチルスコポラミン(ブスコパン®)による急性原発閉塞隅角症

2019年10月掲載

薬剤 臭化ブチルスコポラミン末梢神経系用剤
副作用 急性原発閉塞隅角症
概要 71歳、女性。毎年上部消化管内視鏡検査を受けていたが、検査のたびに嘔気に似た症状を感じていた。今回、検査を終了した2時間後から、右眼の眼痛、霧視が出現した。翌日受診した際の所見では、眼圧は右眼54 mmHg、左眼14 mmHg、矯正視力は右眼(0.4)、左眼(1.0)、前房深度は両眼浅前房で右眼では著明で、左右差を認めた。水晶体は両眼grade 2の白内障、右眼の毛様充血を認め、片眼性の急性原発閉塞隅角症と診断した。
右眼に2%プロカルピン4回点眼、ビマトプロスト1回点眼、ドルゾラミド/チモロール配合剤2回点眼、ブリモニジン2回点眼、アセタゾラミド500 mgを内服、20%マンニトール300 mLを投与した。さらに20%マンニトールを300 mL追加投与することで、眼圧右眼20 mmHg、左眼12 mmHgまで低下した。発症2ヵ月後に超音波乳化吸引術と眼内レンズ挿入術を施行し、大きな合併症なく経過している。

監修者コメント

消化管内視鏡検査を行う際、消化管の蠕動運動を抑制するために、抗コリン薬の臭化ブチルスコポラミン(ブスコパン®️)が使用されている。本症例は、内視鏡検査で使用されたブスコパン®️により、急性原発閉塞隅角症を発症した一例である。胃癌検診などのために上部消化管内視鏡検査の件数は増加しており、今後も急性原発閉塞隅角症の発症は増加することが予想される。合併症を予防するために、リスクの高い症例には積極的にl-menthol(ミンクリア®️)の胃内散布を使用するなどして、既往歴、年齢に応じた蠕動運動抑制薬の使い分けを行うことが重要である。

著者(発表者)
立石守ほか
所属施設名
国際親善総合病院眼科ほか
表題(演題)
内視鏡検査で使用されたブスコパン®により誘発された急性原発閉塞隅角症の1例
雑誌名(学会名)
眼科手術 32(2) 265-268 (2019.4)
第41回 日本眼科手術学会

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