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エタネルセプトによる結核性髄膜炎、肺結核

2019年10月掲載

薬剤 エタネルセプトその他の代謝性医薬品
副作用 結核性髄膜炎、肺結核
概要 73歳、女性。2011年より関節リウマチに対してエタネルセプトとプレドニゾロンを投与されていたが、投与前のスクリーニングではインターフェロンγ遊離試験は施行されていなかった。2017年7月初旬より全身倦怠感と食欲低下が出現し、その後意識障害、項部硬直が出現したため、髄膜炎が疑われた。当初は細菌性髄膜炎、真菌性髄膜炎を疑われ、エタネルセプトを中止して抗生物質を開始したが、脳脊髄液所見は悪化傾向を示した。結核性髄膜炎、リウマチ性髄膜炎の可能性を疑い、抗結核薬4剤併用とステロイドを開始したところ、脳脊髄液中の細胞数は著明に減少し、脳脊髄液抗酸菌培養検査、喀痰抗酸菌培養検査でMycobacterium tuberculosisが陽性を呈した。以上より、結核性髄膜炎、肺結核と確定診断して抗結核薬と免疫治療を継続し、意識レベルと脳脊髄液所見は改善傾向となった。

監修者コメント

Tumor necrosis factor-α(TNF-α)阻害薬であるエタネルセプトは、関節リウマチの治療薬として使用されているが、副作用として、種々の感染症、特に結核を増加させる副作用が報告されている。本症例は、同薬剤の投与中に結核性髄膜炎を発症した一例である。TNF-α阻害薬による脳神経領域での結核感染は比較的稀である。TNF-α阻害薬使用中の患者が発熱、頭痛、意識障害など、髄膜炎を疑う臨床症状が出現した場合には、結核性髄膜炎の可能性も考慮する必要がある。

著者(発表者)
吉田健太郎ほか
所属施設名
鳥取大学医学部脳神経内科ほか
表題(演題)
エタネルセプト投与下に発症した結核性髄膜炎の1例
雑誌名(学会名)
脳神経内科 90(4) 460-464 (2019.4)

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