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フェンタニルによる呼吸抑制

2013年12月掲載

薬剤 フェンタニル非アルカロイド系麻薬
副作用 呼吸抑制
概要 68歳、女性。卵巣がんによる腹膜炎のため、子宮付属器悪性腫瘍手術と血行再建術を予定した。セボフルラン、レミフェンタニル、ロクロニウムによる緩徐導入により、気管挿管を行った。手術開始前にフェンタニル間歇的静脈投与、フェンタニル、リドカインの硬膜外投与を行った。術中はセボフルラン、レミフェンタニルを使用し、麻酔を維持した。手術開始から1時間10分の時点で、硬膜外カテーテルからフェンタニル、ロピバカインの持続注入を開始した。手術終了後、十分な自発呼吸を確認し抜管した。しかし、麻酔終了20分後に意識レベル低下と呼吸抑制に気づき、呼びかけに対する反応が消失した。ただちに人工呼吸管理とし、オピオイドによる呼吸抑制を疑い、ナロキソンを静脈注射したところ、ただちに自発呼吸の再開を認め、意識レベルが回復した。その後、後遺症を残すことなく退院した。

監修者コメント

術中および術後鎮痛に使用される硬膜外麻酔には、鎮痛効果をより高めることを目的に局所麻酔薬に加え、フェンタニルなどのオピオイドが添加されることが多い。本症例では子宮付属器悪性腫瘍手術・血行再建術を施行した後、麻酔からの全覚醒を確認してから約30分後に突然呼吸抑制を生じた。ナロキソンの投与により直ちに回復を認めたため、オピオイドすなわち術中に硬膜外投与されたフェンタニルが原因と考えられた。フェンタニルの硬膜外投与の後は手術終了時に回路内に残存していたフェンタニルやフェンタニルの遅発的効果などさまざまな要因により呼吸抑制を生じる可能性があり、手術終了後も患者の経過観察を十分に行う必要がある。

著者(発表者)
大内謙太郎ほか
所属施設名
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科先進治療科学専攻顎顔面機能再建学講座歯科麻酔全身管理学分野ほか
表題(演題)
硬膜外フェンタニル投与による術後呼吸抑制が疑われた1症例
雑誌名(学会名)
麻酔 62(10) 1237-1240 (2013.10)

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