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アプリンジンによる薬剤性肺障害

2013年12月掲載

薬剤 アプリンジン循環器官用剤
副作用 薬剤性肺障害
概要 60歳代、男性。IgA腎症による末期腎不全で透析を受けていたが、透析開始後に心房細動がみられたためアプリンジンの内服を開始した。その2~3日後から乾性咳嗽と労作時呼吸困難が出現した。アプリンジンの投与後に呼吸器症状が出現していること、投与後に胸部X線写真、胸部CTにて新たな浸潤影がみられ、白血球増多を認めたことから、薬剤性肺障害が疑われた。本剤の内服を中止したところ、間もなく症状は軽快し、画像、検査所見も改善した。

監修者コメント

アプリンジン(アスペノン®)は、上室性、心室性不整脈に用いられるⅠ群の抗不整脈薬である。本症例では透析開始後の心房細動に対してアプリンジンを開始したところ、内服開始後早期に乾性咳嗽、労作時呼吸困難が出現し、画像・検査所見などから薬剤性肺障害が疑われた。日本呼吸器学会による薬剤性肺障害の診断・治療の手引きによれば、診断基準の1つにDLST(drug-induced lymphocyte stimulation test)の陽性があげられているが、本症例では陰性であった。ただしDLSTには偽陰性や偽陽性も多く、本症例ではDLSTが陰性であっても、臨床経過や画像・検査所見などからアプリンジンによる薬剤性肺障害の可能性が高いと考えられる。本剤による薬剤性肺障害の報告はこれまでにほとんどなく、稀な症例といえる。

著者(発表者)
寺柿政和ほか
所属施設名
大野記念病院循環器内科ほか
表題(演題)
アプリンジンによる薬剤性肺障害の1例
雑誌名(学会名)
心臓 45(9) 1161-1168 (2013.9)

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