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ニボルマブ、イピリムマブによる非昏睡型急性肝不全

2019年9月掲載

薬剤 ニボルマブ腫瘍用薬
イピリムマブ腫瘍用薬
副作用 非昏睡型急性肝不全
概要 77歳、男性。悪性黒色腫と診断されニボルマブを開始し、その後、リンパ節転移の増悪に伴いイピリムマブに変更した。変更から2ヵ月後に著名なAST、ALT及び総ビリルビン上昇を認めたが、黄疸症状はなく、イピリムマブは継続された。しかし、約2週間後に黄疸症状が発生し、血液検査でAST 3285 U/L、ALT 1853 U/L、T-Bil 9.4 mg/dLと異常高値を認め、入院となった。メチルプレドニゾロン(mPSL) 60 mg/日を開始し、ASTは1043 U/L、ALTは1178 U/Lまで一旦低下したが、再上昇した。mPSL 500 mg/日の3日間投与でASTとALTは低下傾向となったが、T-Bilは高値で推移した。入院第23日、突然の血圧低下と酸素化不良、血小板低下(1.5万/µL)、PT時間の延長(38%)を来し、同日永眠した。原因検索は行っていないが、それまでの血液検査でPT活性は70%まで回復しており、mPSL後の感染症による敗血症が原因と考えられた。

監修者コメント

免疫チェックポイント阻害剤は免疫抑制系を阻害することで抗腫瘍効果を示すが、様々な臓器で免疫関連有害事象(irAE)を来すことが問題となっている。本症例は、ニボルマブおよびイピリムマブの順次投与によるirAEと考えられた非昏睡型急性肝不全を発症した1例である。ニボルマブからイピリムマブに移行した症例ではirAEが高率に発生し、重症例が多いことが報告されている。本症例のように複数の免疫チェックポイント阻害剤の使用歴がある重症化リスクの高い症例では、慎重な経過観察を行い、異常が認められた際には、早期に適切な治療を行うことが重要である。

著者(発表者)
山本崇文ほか
所属施設名
豊橋市民病院消化器内科ほか
表題(演題)
ニボルマブおよびイピリムマブの順次投与による免疫関連有害事象と考えられた非昏睡型急性肝不全の1例
雑誌名(学会名)
肝臓 60(3) 83-90 (2019.3)

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