スギ花粉舌下液による多形紅斑
2019年9月掲載
薬剤 | スギ花粉舌下液アレルギー用薬 |
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副作用 | 多形紅斑 |
概要 | 12歳女児。近医耳鼻科でスギ花粉症に対して舌下免疫療法(SLIT)を施行された。投与開始3日目にスギ花粉舌下液を増量したところ、投与2時間後に腹部から全身に掻痒感を伴う紅斑が出現した。投与開始4日目より発熱が出現し紅斑拡大傾向となったため、スギ花粉舌下液投与は中止された。抗アレルギー薬を処方されたが紅斑は改善なく、近医より当院紹介となった。体表面積の約50%におよぶ紅斑を認め、プレドニゾロン経口投与を行うも症状改善せず、投与開始6日目に当科入院となった。臨床的には中毒性表皮壊死症が疑われたが、粘膜病変はなく非典型的であり、身体所見、病歴、検査所見からは感染症に伴う発疹症は否定的であった。重症型薬疹に準じてステロイドパルス療法を開始し、掻痒感および紅斑は改善傾向となった。ステロイドを漸減し、入院9日目に退院となった。皮膚病理検査結果からは多形紅斑重症型の病理像であり、その後外来で施行したスギ花粉舌下液のDLSTが陽性であった。病歴よりスギ花粉舌下液による多形紅斑重症型と診断した。 |
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スギ花粉症に対する減感作療法で用いられるスギ花粉舌下液の投与後に多形紅斑重症型を来した1例である。本剤の副作用としては、口内炎、舌下腫脹、頭痛などの局所反応が一般的とされ、本症例のように全身性の多形紅斑重症型を来した症例は稀である。ショックやアナフィラキシーが発症する可能性もあるので、本剤の投与後は観察を十分に行い、血圧低下、呼吸困難、全身潮紅、顔面浮腫・咽頭浮腫、蕁麻疹、喘息などの異常が認められた際には、投与を中止し、直ちに適切な処置を行うことが重要である。
- 著者(発表者)
- 三輪友紀ほか
- 所属施設名
- 岐阜県総合医療センター小児科ほか
- 表題(演題)
- スギ花粉舌下液投与後に多形紅斑重症型を来した1例
- 雑誌名(学会名)
- 日本小児科学会雑誌 123(2) 343 (2019.2)
第122回 日本小児科学会学術集会 (2019.4.19-21)
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