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BCGワクチンによる上腕骨骨髄炎

2013年12月掲載

薬剤 BCG生物学的製剤
副作用 上腕骨骨髄炎
概要 12ヵ月、男児。生後3ヵ月で左上腕部にBCG接種を受けた。生後12ヵ月後から発熱を認め、抗生剤を内服したが、夜間の発熱は持続していた。その後、胸部X線像で右上腕骨近位部の異常陰影を指摘され、当科に紹介された。右上腕骨病巣部の針生検術を施行し、培養菌の遺伝子解析によりウシ型結核菌であるMycobacterium bovis BCG東京株と判明した。isoniazid、rifampicinの経口投与を開始し、CRPは陰性化したが、骨破壊の進行を認めたため、骨幹端部の主病巣を掻把した。その後、2剤の内服を10ヵ月間継続した。術後1年経過して、右肩の疼痛や運動制限はなく、単純X線像では病巣部は良好に修復されており、成長障害も認めていない。

監修者コメント

BCGはウシ型結核菌を継代培養し弱毒化した生ワクチンであり、特にBCG東京株は病原性が低く安全性が高いとされているが、これまでにも稀に骨髄炎の副反応が報告されている。本文献では生後3ヵ月の男児にBCGを接種したところ、9ヵ月後に上腕骨骨髄炎を認めた症例が報告されている。本症例は針生検および結核菌PCRなどにより比較的早期に診断され、抗結核薬の投与と病巣掻把により治癒した。乳幼児期の骨髄炎では、起炎菌としてBCG菌の鑑別を行う必要がある。診断に難渋し、成長障害と脚長差を生じた報告例もあり、早期の診断・治療により骨端線障害や関節障害などの後遺症を残さないよう留意すべきである。

著者(発表者)
上田康博ほか
所属施設名
福井県立病院整形外科ほか
表題(演題)
BCGワクチンによる幼児の上腕骨骨髄炎の1例
雑誌名(学会名)
臨床整形外科 48(10) 1057-1061 (2013.10)

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