ニコランジルによるメトヘモグロビン血症
2019年7月掲載
薬剤 | ニコランジル循環器官用剤 |
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副作用 | メトヘモグロビン血症 |
概要 | 83歳、女性。数日前から胸部不快感があり、増悪し呼吸苦を認めたため救急外来を受診された。既往として高血圧、糖尿病、狭心症、不眠症があり、ニコランジル、ニフェジピン、エソメプラゾール、ロサルタン、エチゾラム、トリアゾラム、クロチアゼパムを内服していた。来院時、心拍数66bpm、血圧138/66mmHg、SpO2 70%(室内気)であり、口唇チアノーゼ著明であった。マスク酸素10L/min投与下にてSpO2は70%付近で推移していたが、血液ガス検査でPaO2 185.9mmHg、またMet-Hb 45%と高値認め、メトヘモグロビン血症と診断した。NPPVを装着し、ICUに入室となった。アスコルビン酸投与、交換輸血を行い、入室後9時間までにMet-Hb 3.5%まで改善し、それに伴いSpO2も90%台後半まで経時的に上昇した。その後、Met-Hbは正常化し、第5病日に退院となった。 |
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ニコランジル(シグマート®️)による薬剤性のメトヘモグロビン血症が疑われた一例である。メトヘモグロビン血症とは、ヘモグロビン内の2価鉄イオンが酸化されて3価鉄イオンとなり酸素結合能、運搬能力低下を引き起こす病態であり、組織での酸素供給の低下をもたらし、重度の場合は致命的となる。本薬剤は狭心症の治療薬として広く使用されているが、副作用としてのメトヘモグロビン血症はほとんど報告されておらず、極めて稀な症例といえる。
- 著者(発表者)
- 友成毅ほか
- 所属施設名
- 医療法人豊田会刈谷豊田総合病院救急集中治療部ほか
- 表題(演題)
- ニコランジル内服によるメトヘモグロビン血症を呈したと考えられる一症例
- 雑誌名(学会名)
- 第46回 日本集中治療医学会学術集会 抄録集(Web) P30-3 (2019)
第46回 日本集中治療医学会学術集会 (2019.3.1-3)
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