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トラマドールによるセロトニン症候群

2013年11月掲載

薬剤 トラマドール中枢神経用薬
副作用 セロトニン症候群
概要 84歳、男性。帯状疱疹にNSAIDsが投与されたが痛みは改善せず、当科外来を受診した。持続痛と突出痛があり、VASは64/100で夜も眠れなかった。トラマドール100mg/4×、200mg/4×、300mg /4×と投与したところ、VASは徐々に低下し、持続痛はほとんどなく、開始3週間後にはVASは23/100となった。開始30日目、何もやる気がなくなり、眠れなくなったためブロチゾラムを投与した。開始42日目、不眠、焦燥感、体重減少を訴えたため、セロトニン症候群を疑いトラマドールを中止した。中止7日目、体重はさらに減少し不眠が続いたため、ジアゼパム、抑肝散を追加投与した。中止14日目、体重は1kg増加し、眠剤内服後4時間は眠れるようになった。

監修者コメント

セロトニン症候群とは脳内のセロトニン濃度が高値になることによって引き起こされる症状の総称で、主にうつ病の治療薬であるSSRIなどの多量内服により発症することが報告されている。症状は不安、興奮、振戦、発汗、下痢などである。本症例では高齢者の帯状疱疹後神経痛にトラマドールを投与した後、不眠、焦燥感、体重減少などを認め、セロトニン症候群が疑われた。トラマドールはオピオイド受容体に直接作用するほか、セロトニン・ノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで下行性疼痛抑制系を賦活する。トラマドールによるセロトニン症候群は稀であるが、特に高齢者に投与する場合は注意が必要である。

著者(発表者)
山本兼二ほか
所属施設名
旭川医科大学医学部麻酔科蘇生科ほか
表題(演題)
トラマドール投与後にセロトニン症候群が疑われた1症例
雑誌名(学会名)
第93回 北海道医学大会ペインクリニック分科会(第29回 北海道ペインクリニック学会) プログラム・抄録 12 (2013)
第93回 北海道医学大会 (2013)
北海道医学大会ペインクリニック分科会、第29回 北海道ペインクリニック学会 (2013.9.21)

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