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アセチルコリン負荷による冠動脈解離、血腫

2019年4月掲載

薬剤 アセチルコリン末梢神経系用剤診断用薬(体外診断用医薬品を除く)
副作用 冠動脈解離、血腫
概要 39歳、女性。全身性エリテマトーデスに対して、20歳よりステロイド療法、36歳よりメトトレキサートを内服している。2018年5月より安静時胸部圧迫感を繰り返すようになり、当科受診。冠動脈CTA(computed tomography angiography)、心臓エコー図で異常所見を認めなかった。冠攣縮性狭心症に対する診断的治療として、硝酸剤、Ca拮抗剤を開始した結果、胸部症状の改善を認めた。確定診断を希望されたため、アセチルコリン負荷試験を施行。右冠動脈にアセチルコリン20μgを冠注後、心電図でのST上昇および冠動脈造影での冠動脈近位部完全閉塞を認めた。硝酸剤、ニコランジル、Ca拮抗剤を使用するも順行性血流が改善せず、造影剤のpoolingを認めた。冠動脈解離、血腫の合併と考え、PCI(経皮的冠動脈インターベンション)を施行、ステント留置し、順行性血流の再開が得られた。

監修者コメント

冠攣縮性狭心症は冠動脈の一過性の収縮によって起こり、労作性狭心症とは異なり、夜間や早朝などの安静時に発作が起こることが特徴である。確定診断のためには、アセチルコリンを冠動脈内に注入し、冠動脈が攣縮するかどうかを確認することが必要である。本症例では、このアセチルコリン負荷試験によって冠動脈解離および血腫を発症した。稀な合併症ではあるが、冠動脈解離から心筋梗塞を発症することもあるため、アセチルコリン負荷試験を行う際には十分な注意が必要である。

著者(発表者)
内藤和幸ほか
所属施設名
JCHO札幌北辰病院 循環器科
表題(演題)
アセチルコリン負荷試験で、冠動脈解離、血腫を合併し、ステント留置にてbail outした一例
雑誌名(学会名)
第47回 日本心血管インターベンション治療学会北海道地方会 プログラム・抄録集 31 (2018)
第47回 日本心血管インターベンション治療学会北海道地方会(2018.10.20)

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