せりみっく 今月の症例

ホーム > 新着文献  > フルオロウラシルによるペラグラ

フルオロウラシルによるペラグラ

2019年3月掲載

薬剤 フルオロウラシル腫瘍用薬
副作用 ペラグラ
概要 60歳代、男性。S状結腸癌術後、再発・転移が認められ、初診8ヶ月前より、mFOLFOX6+Bmab(フルオロウラシル(5-FU)、レボホリナート、オキサリプラチンおよびベバシズマブ)療法、FOLFIRI+Pmab(5-FU、レボホリナート、イリノテカンおよびパニツムマブ)療法を施行された。食欲の低下があり、食事摂取量は低下し、徐々に下痢、顔面の色素沈着、口内炎の多発を認めるようになった。初診時、顔面、頸部の露光部に鱗屑を伴う浮腫性紅斑、黒褐色の色素沈着、皮膚萎縮を認めた。会話の問いかけに対し反応はやや緩慢であった。5-FU投与歴を含む病歴、臨床症状、血中ニコチン酸、トリプトファンが低値を示したことより5-FUによるペラグラと診断した。食事の改善、アミノ酸配合液による補液、ニコチン酸アミド内服により皮疹、下痢、意識障害の改善を認めた。

監修者コメント

大腸癌に対する化学療法として投与された5-FUにより発症したペラグラの一例である。ペラグラはニコチン酸の欠乏によって発症し、皮膚炎・下痢・認知症を主症状とする疾患である。5-FUによりトリプトファンからニコチン酸への代謝障害が報告されており、本剤による代謝障害と摂食量の低下によるニコチン酸やトリプトファンの摂取低下が複合的に要因となり、ペラグラを発症したと考えられた。癌患者は年々増加しており、今後も5-FUを投与する機会が増えることが予想される。ペラグラが合併症として生じうる可能性を認識する必要がある。

著者(発表者)
小嶌綾子ほか
所属施設名
宇治武田病院皮膚科ほか
表題(演題)
5-FU投与患者に生じたペラグラの1例
雑誌名(学会名)
皮膚の科学17(1) 21-24 (2018.2)

新着文献 一覧

PAGETOP