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セフトリアキソンによる血液凝固第5因子インヒビター出現

2019年3月掲載

薬剤 セフトリアキソン抗生物質製剤
副作用 血液凝固第5因子インヒビター出現
概要 87歳、男性。発熱、倦怠感、意識低下を主訴に来院し、全身に紅斑や緊満性の水泡も認められた。血液検査で炎症反応を認め、免疫学的検査では、デスモグレイン1および3抗体は陰性で、抗BP180抗体は陽性であった。誤嚥性肺炎に伴うSystemic Inflammatory Response Syndrome(SIRS)ならびに水疱性類天疱瘡と診断され、セフトリアキソン(CTRX) 2.0 g/日の点滴投与とプレドニゾロン(PSL)20 mg/日の内服が開始となった。第15病日、CTRX投与後に新たな全身の皮疹が出現し、CTRXによる薬剤性アレルギーと診断され、セフメタゾール(CMZ)に変更された。その後、セフタタジム(CAZ)、セフォペラゾン(SBT/CPZ)に変更したが、投与後に皮疹増悪を繰り返した。第21病日、ホスホマイシンに変更し、皮疹は消失し解熱した。
栄養療法のため中心静脈ポート増設を行うこととなり、その術前検査で血液凝固異常を認めた。第26病日の検査では、凝固第5因子活性は測定感度以下で、その他の因子活性も軽度低下していた。また、画像所見では多発筋内血腫の所見も認められた。臨床経過から第5因子インヒビターと診断され、PSL 60 mg/日が開始された。第38病日にPT-INR値は1.31まで改善し、PSLの減量を開始、以後、凝固異常の悪化は認めなかった。

監修者コメント

水疱性類天疱瘡に対するセフェム系抗生物質CTRXの投与により、血液凝固第5因子インヒビターを認めた一例である。CTRX投与中に凝固第5因子に対する自己抗体が出現し、凝固機能が低下した結果、多発出血を来したと考えられた。水疱性類天疱瘡自体が稀な疾患であるが、本症例ではさらに血液凝固第5因子インヒビターの出現を合併しており、極めて稀な病態と言える。凝固因子に対するインヒビターは、重篤な出血症状を引き起こす可能性があるため十分な注意が必要である。

著者(発表者)
田中稔一郎ほか
所属施設名
名古屋市立西部医療センター総合内科ほか
表題(演題)
水疱性類天疱瘡に血液凝固第5因子インヒビターを認めた一例
雑誌名(学会名)
名古屋市立病院紀要 40 47-51 (2017)

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