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ロキソプロフェンナトリウムによるインスリン自己免疫症候群

2019年1月掲載

薬剤 ロキソプロフェンナトリウム中枢神経用薬
副作用 インスリン自己免疫症候群
概要 82歳、女性。糖尿病を指摘されたことはなく、インスリン治療歴、SH基を有する薬剤やαリポ酸の内服歴もなかった。以前から腰痛に対しロキソプロフェンナトリウムを内服していたが、運動時のふらつきと空腹時の手指振戦を主訴に受診し、IRI 945.5µU/mLと高値を認めたため、精査目的で入院となった。
空腹時血糖値 99 mg/dL、HbA1c 5.6%、Cペプチド4.0 ng/mLで、インスリン抗体は87.1%と高値であった。HLA-DR4陽性で、75g OGTTではIGI型を呈し、IRIは前値44.2µU/mLから180分値1,434µU/mLまで上昇した。ロキソプロフェンナトリウムによるリンパ球刺激試験は偽陽性であった。
インスリン自己免疫症候群(Insulin Autoimmune Syndrome:IAS)と診断し、被疑薬のロキソプロフェンナトリウムを中止した。その後、低血糖発作は消失し、血中IRIとインスリン抗体は徐々に低下した。3年後にはIRI 3.7µU/mLインスリン抗体7.1%まで改善した。

監修者コメント

インスリン自己免疫症候群(IAS)は、インスリンによる治療歴がないにもかかわらず、高力価のインスリン自己抗体が血中に存在し、低血糖発作を引き起こす疾患である。本症例はロキソプロフェンナトリウムが原因と考えられた稀なIASであるが、本薬剤は日常診療において消炎鎮痛剤として頻用されており、内服中に低血糖症状などを認めた場合にはIASも考慮すべきである。

著者(発表者)
川合未来ほか
所属施設名
済生会横浜市東部病院糖尿病・内分泌内科
表題(演題)
ロキソプロフェンナトリウムによるインスリン自己免疫症候群の1例
雑誌名(学会名)
第19回 日本内分泌学会関東甲信越支部学術集会 プログラム・抄録集 96 (2018)
第19回 日本内分泌学会関東甲信越支部学術集会(2018.9.7-8)

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