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ガドブトール(ガドビスト®)による非心原性肺水腫

2018年12月掲載

薬剤 ガドブトール診断用薬(体外診断用医薬品を除く)
副作用 非心原性肺水腫
概要 42歳、女性。約半年前から右上肢の疼痛と痺れが出現し、頸髄腫瘍疑いで造影MRIによる精査の方針となった。MRI造影剤としてガドブトール(ガドビスト®1.0 mol/L) 7.5 mLを経静脈投与し、明らかな副作用の出現なく検査を終了した。しかし、検査終了後約30分後(造影剤投与から約60分後)に、気分不良と嘔気を訴え、SpO2 77%と急速な酸素化の低下を認めた。
血液ガスではpH 7.372、PCO2 40.1 mmHg、PO2 58.4 mHg、HCO3 22.7 mmol/Lと低酸素血症が認められ、血液検査では、WBC 11,700/µL、CRP 0.60 mg/dLと軽度の炎症反応がみられるものの、明らかな心電図や心エコー検査の異常はなく、心原性肺水腫を示唆する所見はみられなかった。他に原因となる薬物や食物の接種歴がなく、投与から約1時間後に症状が出ていることから、造影剤アレルギーによる非心原性肺水腫と診断した。
ステロイド(ソル・コーテフ®125 mg)点滴投与を行ったが低酸素血症の改善は得られず、挿管困難であったため、輪状甲状靭帯切開を施行した。術後は急性呼吸窮迫症候群に準じて発症日より3日間のステロイド・パルス療法(ソル・コーテフ®1,000 mg/日)と7日間の好中球エラスターゼ阻害薬(エラスポール®100 mg/日)を投与した。数日後に肺水腫は改善し、第12病日に経口摂取を開始、第13病日に人工呼吸器を離脱した。その後、後遺症なく第48病日に自宅退院となり、完全社会復帰を果たした。

監修者コメント

ガドリニウム造影剤による造影MRIは、病巣の評価や治療方針の決定において重要な役割を果たしている。本文献では、MRI造影剤であるガドブトールにより非心原性肺水腫を発症した一例を報告している。本剤はCTで使用するヨード造影剤に比べ副作用の頻度は少なく比較的安全とされているが、本症例のように重篤な副作用を引き起こすことがあるため、注意が必要である。

著者(発表者)
福田海ほか
所属施設名
医療法人伸裕会渡辺病院内科ほか
表題(演題)
MRI造影剤により生じた非心原性肺水腫の1救命例
雑誌名(学会名)
臨床放射線 63(7) 843-846 (2018.7)

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