補中益気湯による反応性低血糖
2018年10月掲載
薬剤 | 補中益気湯漢方製剤 |
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副作用 | 反応性低血糖 |
概要 | 42歳、女性。肩甲部の痛みと前胸部痛に対して柴胡加竜骨牡蛎湯が開始された。症状の改善が認められたが、感冒症状出現後から疲労感が増悪し、補中益気湯と桂枝加竜骨牡蛎湯に変更された。処方変更後から食後2、3時間頃に心窩部の気持ち悪さと背部痛が出現するようになった。飴などのお菓子を摂取すると症状は速やかに消失していた。血液検査で随時血糖値48mg/dLを認め、精査を行ったが低血糖をきたす器質的疾患は認められなかった。経口糖負荷試験(OGTT)を行ったところインスリン過分泌がみられ、補中益気湯による反応性低血糖と判断した。処方を柴胡加竜骨牡蛎湯に戻したところ、食後の症状は消失し、OGTTの再検でもインスリンの過分泌は改善していた。 |
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補中益気湯により反応性低血糖をきたした一例である。六君子湯が胃の蠕動運動を亢進する作用は広く認識されているが、補中益気湯にも同様の作用が報告されている。補中益気湯により胃の蠕動運動が亢進され、ダンピング症候群に類似した反応性低血糖をきたした可能性が考えられている。漢方薬による反応性低血糖の発症はほとんど報告がなく、稀な症例といえる。
- 著者(発表者)
- 山崎玄蔵ほか
- 所属施設名
- 市立島田市民病院
- 表題(演題)
- 補中益気湯により反応性低血糖をきたした1例
- 雑誌名(学会名)
- 日本東洋医学雑誌 69(S) 385 (2018.5)
第69回 日本東洋医学会学術総会 (2018.6.8-10)
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