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バルプロ酸によるフィブリノーゲン低下

2018年10月掲載

薬剤 バルプロ酸中枢神経用薬
副作用 フィブリノーゲン低下
概要 85歳、女性。6年半前より関節リウマチに対してトシリズマブ(TCZ)の皮下注射、 1ヵ月前から出現した三叉神経痛に対してバルプロ酸(VPA)800 mg/日による治療を受けていた。意識障害にて当院に救急搬送され、入院となった。肺炎と脱水の診断で抗菌薬と補液で改善したが、入院時に認めたフィブリノーゲン(Fib) 値の低下(76 mg/dL)は経時的に悪化し、第16病日には38 mg/dLとなった。骨髄検査でもFib低下の原因を特定できる所見は認めなかった。第23病日にVPAを中止したところ、その8日後にはFib上昇傾向となり、第45病日にはFib 157 mg/dLまで上昇した。TCZによるFib低値も鑑別にあがったが、投薬歴とFib値の時間経過からVPAによるFib低値であると考えられた。

監修者コメント

本文献では、三叉神経痛に対して抗てんかん薬であるVPA(デパケン®)を投与したところ、高度の薬剤性フィブリノーゲン低下をきたした症例を報告している。小児領域ではVPA投与に伴う低フィブリノーゲン血症が報告されているが、本例のように成人でFib 100 mg/dL以下の高度低下をきたす症例は稀といえる。小児だけではなく、成人においてもVPA投与時の注意すべき副作用として低フィブリノーゲン血症を認識する必要がある。

著者(発表者)
船越健司ほか
所属施設名
大阪急性期・総合医療センター免疫リウマチ科
表題(演題)
バルプロ酸にて高度の薬剤性フィブリノーゲン低下を来した1例
雑誌名(学会名)
第220回 日本内科学会近畿地方会 65 (2018)
第220回 日本内科学会近畿地方会 (2018.6.16)

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