ダサチニブによる器質化肺炎
2018年9月掲載
薬剤 | ダサチニブ腫瘍用薬 |
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副作用 | 器質化肺炎 |
概要 | 52歳、男性。慢性骨髄性白血病(CML)に対して、他院で1年前からダサチニブ50 mg/日の内服を開始、100 mg/日まで増量し経過をみていた。徐々に息切れが出現し、胸部X線、胸部CTで浸潤影、両側胸水をみとめた。ダサチニブによる肺水腫と体液貯留が疑われ、抗菌薬と利尿剤が開始されたが改善をみとめず、当科を紹介受診した。経気管支肺生検で肺胞腔内にポリープ状線維化巣をみとめ、器質化肺炎と診断し、ダサチニブを中止した。その後は、メチルプレドニゾロン(mPSL)125 mgを3日間点滴静注し、mPSL 52mg/日の内服(1 mg/kg)へ減量して漸減することとなった。臨床症状と画像所見の改善後、CMLに対して、イマチニブならびにニロチニブを投与したが治療効果を認めず、 ダサチニブ中止後48日目からmPSL 28 mg/日の内服併用下でダサチニブ100 mg/日の内服を再開し、器質化肺炎の再燃もなく、CMLをコントロールすることができた。 |
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チロシンキナーゼ阻害薬であるダサチニブはCMLの治療薬として使用されている。本文献ではCMLに対して本薬剤による治療を行なっていたところ、副作用として器質化肺炎を発症した1例を報告している。器質化肺炎とは、肺胞から肺胞近くの細気管支にかけての炎症および気腔内のポリープ状の器質化組織を特徴とする病変である。本薬剤による器質化肺炎の報告はこれまでになく、稀な症例といえる。
- 著者(発表者)
- 佐藤美由紀ほか
- 所属施設名
- 新潟大学医歯学総合病院・呼吸器・感染症内科ほか
- 表題(演題)
- ダサチニブによる器質化肺炎の1例
- 雑誌名(学会名)
- 癌と化学療法 45(5) 851-854 (2018.5)
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