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スニチニブリンゴ酸塩による顎骨壊死、肝機能障害

2018年7月掲載

薬剤 スニチニブリンゴ酸塩腫瘍用薬
副作用 顎骨壊死、肝機能障害
概要 72歳、男性。腎細胞癌術後肺転移に対し、2015年11月よりスニチニブ(スーテント®)の経口投与が開始された。6日後に肝機能障害を認めたため内服中止となり、その後減量し投与継続されていた。ビスフォスホネート(BP)製剤やデノスマブによる治療歴はなかった。2016年1月より右下顎大臼歯部の骨露出および同部への下の接触痛を自覚し、当科初診となった。薬剤関連性顎骨壊死(MRONJ)の診断の下、口腔衛生管理および局所の洗浄を行うこととし、スニチニブはさらなる減量後継続された。初診より3か月後には腐骨の脱落を認め、その1か月後には骨露出部は完全に上皮化し、治癒を確認した。progressive disease(PD)が確認され、新たにアキシチニブ(インライタ®)内服開始となったが、投与中に下顎大臼歯部舌側に骨露出と周囲歯肉の発赤を認めた。治癒を確認後、PDと判断されニボルマブにて化学療法中である。

監修者コメント

スニチニブ(スーテント®)は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)を含む複数の受容体を阻害するチロシンキナーゼ阻害薬であり、切除不能または転移性の腎細胞癌などの治療薬として用いられている。本文献では、本薬剤の投与後に顎骨壊死を生じた症例を報告している。本薬剤によりVEGFRが阻害され、血管新生阻害や破骨・骨芽細胞の活性抑制による骨のリモデリングの阻害に起因して顎骨壊死に至った可能性が考えられている。今後も本薬剤を投与する患者が増えることが予想され、それに伴い顎骨壊死の副作用も増加する可能性があるため、注意が必要である。

著者(発表者)
岩田英治ほか
所属施設名
神戸大学大学院医学研究科外科系講座口腔外科学分野
表題(演題)
スニチニブ投与患者に発症した顎骨壊死の1例
雑誌名(学会名)
日本口腔外科学会雑誌 64(2) 83-87 (2018.2)

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