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カルフィルゾミブによる急性心不全

2018年7月掲載

薬剤 カルフィルゾミブ腫瘍用薬
副作用 急性心不全
概要 80歳、男性。多発性骨髄腫と診断され、抗癌剤治療を受けていた。Day 1とday 2にカルフィルゾミブ30 mg/日(20 mg/m2)の1サイクル目の初回投与を受け、 day 8とday 9に80 mg/日(56 mg/m2)の1サイクル目2回目の投与を受けた。体重増加はなかったが、連日2000 mL/日前後あった尿量が、day 9に500 mL/日まで低下し、day 10に呼吸状態が急速に悪化したため、急性心不全と診断された。フロセミド20 mg静注から100 mgまで漸増するも反応なく、循環器内科転科および集中治療室入室となった。
経胸壁心臓超音波検査では、左室駆出分画18 %、壁運動は全体的に低下し、左室拡張末期径51 mm、左室収縮末期径47 mm、三尖弁圧較差54 mmHgと肺高血圧症を認めた。ドブタミン5γを開始し、フロセミドに反応しない為、カルペリチド0.026γの持続静注を開始したが効果に乏しく、day 12に持続的血液濾過透析法(CHDF)を開始した。尿量は徐々に増加し、day 17にCHDFを終了した。徐々に改善をみとめ、day 27に血液内科転科となった。Day 29に心臓造影MRI(CMR)を撮影し、心筋の肥厚や非薄化は認めず、壁運動は保たれた。遅延ガドリウム造影では、心基部後側壁の外側寄りに一部高信号が疑われた。

監修者コメント

プロテアソーム阻害薬であるカルフィルゾミブ(カイプロリス®)は、再発または難治性の多発性骨髄腫の治療薬として用いられている。本文献では、本薬剤の投与後に急性心不全を発症した症例を報告している。本薬剤の添付文書にも重大な副作用として心不全が記載されている。頻度は少ないものの、本薬剤の投与中は心不全を発症する可能性を考慮し、慎重に経過観察を行う必要がある。

著者(発表者)
片桐真矢ほか
所属施設名
上尾中央総合病院循環器内科
表題(演題)
Carfilzomibによる急性心不全の1例
雑誌名(学会名)
第28回 日本心血管画像動態学会 プログラム・抄録集 102 (2018)
第28回 日本心血管画像動態学会 (2018.1.12-13)

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