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メチルプレドニゾロンによる偽膜性腸炎

2013年9月掲載

薬剤 メチルプレドニゾロンホルモン剤(抗ホルモン剤を含む)
副作用 偽膜性腸炎
概要 78歳、男性。再発性肺癌に対する化学療法中に間質性肺炎を合併し、ステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン1,000mg×3日間)が開始された。開始1ヵ月後に突然、頻回の下痢と腹部痛が出現した。腹部全体に激しい反跳痛と筋性防御を伴い、腹部CT検査で下部消化管穿孔を疑い緊急手術を施行した。腹腔内所見からS状結腸穿孔と診断し、Hartmann手術を施行した。切除標本は、病理組織学的に偽膜性腸炎と S状結腸憩室穿孔と診断された。術後直ちにメトロニダゾールによる治療を開始し、一時的に症状は改善したが、約1ヵ月後に死亡した。

監修者コメント

偽膜性大腸炎は抗菌薬投与により腸内の正常floraが菌抗体現象によって乱された結果、異常増殖したC.difficileが産生する毒素が惹起する腸炎である。C.difficile感染の原因の大部分は抗菌薬治療であるが、本症例ではステロイドパルス療法後に偽膜性腸炎から憩室炎をきたし、憩室穿孔に至った稀な症例である。ステロイドパルス療法のように免疫能が強力に抑制される状況下では抗菌薬の関与無しに腸内floraが乱される可能性があると考えられる。このような治療中に頻回の下痢や腹痛を認める場合は、合併症として偽膜性大腸炎を考慮する必要がある。

著者(発表者)
大谷裕ほか
所属施設名
松江市立病院腫瘍化学療法・一般外科ほか
表題(演題)
ステロイドパルス療法中に発症した偽膜性腸炎によるS状結腸憩室穿孔の1例
雑誌名(学会名)
日本臨床外科学会雑誌 74(6) 1606-1610 (2013.6)

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