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バラシクロビルによる可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症(MERS)

2018年6月掲載

薬剤 バラシクロビル化学療法剤
副作用 可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症(MERS)
概要 32歳、男性。既往にアトピー性皮膚炎があり、年に数回増悪時にプレドニゾロンを短期間内服していた。2日前より発熱と顔面・上肢に小水疱・丘疹が生じ、カポジ水痘様発疹症と診断され、入院となった。バラシクロビル(VACV)750 mg/日、セフニジル300 mg/日、ステロイド外用剤を開始したところ、入院3日目に病棟内を裸で歩き回っているところを発見され、幻覚ならびに妄想も認めた。尿検査ではβ2MGが上昇し、頭部造影MRIでは脳梁膨大部に拡散強調画像(DWI)高信号・ADC map低信号を呈し、増強効果を伴わない境界明瞭な病変を認めた。また、感染症関連検査では血清単純ヘルペスウイルス(HSV)の抗IgG/IgM抗体が上昇していたが、髄液所見で異常はなく、腎機能も正常であった。
臨床経過からアシクロビル(ACV)脳症の可能性を否定できなかったため、VACVをファムシクロビルへ変更し4日間投与した。異常行動や幻覚は速やかに消失し、入院23日目の頭部MRIでは脳梁膨大部病変の消失も認めた。皮膚症状も改善し、入院26日目に後遺症なく退院した。

監修者コメント

可逆性脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎・脳症(MERS)は、頭部MRIにて脳梁膨大部に可逆性病変を認める脳炎・脳症として提唱されている疾患概念である。発熱後7日以内に異常行動、意識障害、痙攣などで発症し、多くは発症後10日以内に回復するため、予後は良好である。本症例では、MERSの原因としてHSV感染もしくはACV脳症が考えられているが、これまでに報告されているMERSにはこれらの原因はなく、稀な1例といえる。

著者(発表者)
榎戸貴祥ほか
所属施設名
東京逓信病院神経内科ほか
表題(演題)
カポジ水痘様発疹症に対してアシクロビルを投与中に可逆性脳梁膨大部病変を呈した1例
雑誌名(学会名)
逓信医学 69(4) 202-208 (2017.12)

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