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当帰四逆加呉茱萸生姜湯による可逆性脳血管攣縮症候群

2018年5月掲載

薬剤 当帰四逆加呉茱萸生姜湯漢方製剤
副作用 可逆性脳血管攣縮症候群
概要 52歳、女性。1年前から冷え性に対し当帰四逆加呉茱萸生姜湯を内服していた。嘔気・下痢と軽度の頭痛を認め、近医で整腸剤と制吐剤を処方されて改善したが、3日後の夜、経験したことのない強い頭痛・嘔吐と胃痛が生じ、救急外来を受診した。症状が軽減し帰宅したものの、翌日に再発し救急搬送された。神経学的異常所見はなかったが、頭部CT及び頭部MRIで左後頭葉から頭頂葉にくも膜下出血を、頭部MRAで左中大脳動脈遠位部に脳血管攣縮所見を認め、可逆性脳血管攣縮症候群と診断された。内服していた当帰四逆加呉茱萸生姜湯に含まれる甘草が脳血管収縮に関与した可能性が考えられた。
安静、降圧、ベラパミル内服を開始し、2日後には頭痛はほぼ消失した。入院後6日のMRIでは、くも膜下出血が消退する一方で入院時よりも広い範囲に脳血管攣縮像を認めた。症状が消失したため、ベラパミル内服を継続し、入院後8日で退院した。退院後18日のMRAでは脳血管攣縮所見の改善を認めた。

監修者コメント

可逆性脳血管攣縮症候群(Reversible cerebral vasoconstriction syndrome、RCVS)は激しい頭痛を主徴とし、びまん性、分節性に可逆性の脳血管攣縮を呈する症候群である。生薬を含む薬物が誘因となったRCVSは稀であり、本症例の様に当帰四逆加呉茱萸生姜湯が原因薬剤と考えられた症例はこれまでに報告がない。本生薬にも含まれる甘草が脳血管攣縮に関与した可能性が考えられ、漢方薬を内服中に激しい頭痛が出現した際には、RCVSも考慮する必要がある。

著者(発表者)
畠山遥ほか
所属施設名
秋田赤十字病院神経内科
表題(演題)
当帰四逆加呉茱萸生姜湯が原因と考えられた可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)の1例
雑誌名(学会名)
日本内科学会東北地方会会誌 30(1) 29 (2018)
第213回 日本内科学会東北地方会 (2018.2.17)

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