リピオドールによる肉芽腫性炎症
2018年5月掲載
薬剤 | リピオドール診断用薬(体外診断用医薬品を除く) |
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副作用 | 肉芽腫性炎症 |
概要 | 30歳代、女性。不妊治療歴があり、8ヵ月前にリピオドールによる子宮卵管造影を受けていた。左鼠径部腫瘤を自覚し、鼠径ヘルニアの診断で当院を紹介受診した。左鼠径部にクルミ大の腫瘤を触知し、単純CTで左鼠径ヘルニアとヘルニア嚢内に高濃度の多房性膿疱性腫瘤を認めた。経膣エコー検査で両側卵巣に異常はなく、骨盤内に存在していた。奇形腫や造影剤による左鼠径管内黄色肉芽腫などを疑い、腹腔鏡下に腫瘤切除及びヘルニア修復を行う方針となった。左鼠径部のヘルニア嚢を腹腔側に引き出したところ、腹膜鞘状突起先端が嚢腫状に変化し、内部に漿液性の液体貯留を認めた。ヘルニア嚢を切除した後、メッシュによるヘルニア修復を行った。 経過は良好で、術後2日目に退院した。病理検査では嚢腫状のヘルニア嚢に腫瘍性病変はなく、多数の脂肪滴と白血球の貪食像を認め、リピオドールによる肉芽腫性炎症の所見を呈していた。術後6ヵ月が経過したが、ヘルニア再発は認めていない。 |
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油脂性造影剤(リピオドール)による肉芽腫性炎症の報告は稀であり、本症例の様に肉芽腫性炎症によるヘルニアの顕在化を来した症例は更に少ないと考えられる。近年、不妊治療が増加傾向にあり、子宮卵管造影を受ける機会も増えることが予想されるため、子宮卵管造影後の合併症の一つとして肉芽腫性炎症を念頭に置く必要があると考えられる。
- 著者(発表者)
- 宮崎佳子ほか
- 所属施設名
- 島根大学消化器・総合外科
- 表題(演題)
- 油性造影剤による子宮卵管造影後に鼠径ヘルニア嚢内に肉芽腫性変化を来した1例
- 雑誌名(学会名)
- 第30回 日本内視鏡外科学会総会 抄録集 EP180-03 (2017)
第30回 日本内視鏡外科学会総会 (2017.12.7-9)
監修者コメント