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パクリタキセルによる好中球減少

2018年4月掲載

薬剤 パクリタキセル腫瘍用薬
副作用 好中球減少
概要 71歳、女性。乳癌の補助化学療法としてエピルビシン・シクロホスファミド併用療法を4コース完遂し、アルブミン懸濁型パクリタキセル注射液(nabPTX)・トラスツズマブ併用療法に移行した。nabPTX初回投与後から7日目の血液検査で好中球が0/mm3となり、緊急入院となった。セフェピムおよびgranulocyte-colony stimulating factor(G-CSF)の投与を開始したが著変なく、入院3日目にショック状態となったためICU管理を行った。感染所見は認めず、ショック状態を起こす原因は認めなかったが、発熱、好中球減少、炎症反応高値、著名な低酸素血症、乳酸アシドーシスを認めたため、発熱性好中球減少症(FN)を想定し、サイトカイン吸着療法を用いた持続的血液ろ過透析法を施行した。サイトカイン吸着から劇的に全身状態が改善し、入室から5日目に脱管しICU退出、急変から51日目に独歩で自宅退院となった。

監修者コメント

nabPTX(アブラキサン®)は、パクリタキセルの安全性・有効性を改善する目的で開発された抗がん剤である。ヒト血清アルブミンにパクリタキセルを結合させナノ粒子化した製剤であり、過敏症が起こる可能性の高い溶媒を使用していない。本文献では、nabPTXの投与後にショック状態となり、サイトカイン吸着療法にて救命し得た症例を報告している。nabPTXは他のタキサン系薬剤に比較して安全性が高いとされているが、本症例のように重篤な好中球減少を引き起こすことがあり、注意が必要である。

著者(発表者)
吉川勝広ほか
所属施設名
関西医科大学・外科学講座
表題(演題)
アルブミン懸濁型パクリタキセル注射液投与後にショック状態になりサイトカイン吸着療法にて救命し得た症例
雑誌名(学会名)
癌と化学療法 44(12) 1358-1360 (2017.11)
第39回 日本癌局所療法研究会 (2017.6.23)

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