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ゲムシタビンによる溶血性尿毒症症候群

2013年9月掲載

薬剤 ゲムシタビン腫瘍用薬
副作用 溶血性尿毒症症候群
概要 54歳、女性。卵巣癌(明細胞腺癌)stageIIIcに対して子宮単純全摘、両側付属器切除、大網切除、骨盤内傍大動脈リンパ節郭清を行った。術後補助療法としてirinotecan/cisplatin療法を行ったが、傍大動脈リンパ節と肝に再発したため、放射線療法併用にてdocetaxel/carboplatin療法4コース、gemcitabine/carboplatin療法6コース、gemcitabine単独療法5コースを行った。その頃から呼吸困難、浮腫、貧血を認め、血液検査で溶血性貧血(Hb5.5mg/dL)、血小板減少(Plt51,000/mm3)、急性腎不全(Cr3.2mg/dL)を認めたため、gemcitabineによる溶血性尿毒症症候群と診断した。計8回の血漿交換及び血液透析を行い、貧血、血小板減少は改善したが、腎機能は回復せず、維持透析となった。

監修者コメント

Gemcitabineは膵癌などの消化器癌に対する化学療法の第一選択薬であるが、近年、難治性再発卵巣癌の化学療法に用いられるようになった。溶血性尿毒症症候群は①溶血性貧血②血小板減少③腎機能障害を3徴とする疾患である。溶血性尿毒症症候群の原因としては、病原性大腸菌O-157:H7株の産生するベロトキシンによるものが有名であるが、その他、悪性腫瘍や抗悪性腫瘍剤などによるものが報告されている。Gemcitabineによる溶血性尿毒症症候群はまれな合併症であるが、本症例のように腎機能障害が回復せず、維持透析となってしまう症例もある。Gemcitabine投与中に貧血、血小板減少、腎機能障害を認める場合は溶血性尿毒症症候群を念頭に置いて対応する必要がある。

著者(発表者)
西澤千津恵ほか
所属施設名
長野市民病院婦人科ほか
表題(演題)
再発卵巣癌に対するgemcitabine治療中に発症した溶血性尿毒症症候群の一例
雑誌名(学会名)
日本婦人科腫瘍学会雑誌 31(3) 567-571 (2013.6)

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