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ニボルマブによる急性脱髄性ニューロパチー

2018年3月掲載

薬剤 ニボルマブ腫瘍用薬
副作用 急性脱髄性ニューロパチー
概要 66歳、男性。転移を伴う非小細胞肺癌に対し、carboplatinとnab-paclitaxelによる抗癌剤治療が開始されたが、病巣拡大を認めたため、nivolumabによる治療に変更した。2コース目の治療終了から5日後に下肢筋力低下が出現し、その5日後には起立困難となり前医に入院となった。発症9日目にnivolumabによる免疫関連副作用が疑われ、prednisolone 60mg/日が投与されたが、筋力低下が進行し当院に転院した。神経学的検査では脳神経麻痺はなく、四肢筋力低下と腱反射消失、四肢遠位部の異常感覚と下肢深部覚の低下を認めた。血液検査では、血清カリウム、クレアチンキナーゼ、甲状腺機能は正常で、抗アセチルコリン受容体抗体は陰性であった。神経伝導検査で正中・尺骨・後脛骨神経において遠位潜時の延長と伝導速度の低下を認めたため、急性脱髄性ニューロパチーと診断した。経静脈的免疫グロブリン療法を施行したところ、筋力は徐々に改善した。急性期患者血清において、IgM抗GM2抗体と抗GalNAc-GD1a抗体が検出されたが、ペア血清による抗体検査ではサイトメガロウィルス、マイコプラズマ、EBウィルスによる先行感染は否定的であった。

監修者コメント

ニボルマブ(オプジーボ®)などの免疫チェックポイント阻害薬は悪性黒色腫や非小細胞肺がんの新たな治療薬として注目されている。本剤のT細胞活性化作用により、重症筋無力症などの免疫関連副作用が報告されている。また、本剤の適正使用ガイドにおいても、副作用として末梢性ニューロパチー、ギラン・バレー症候群、脱髄などの神経障害が記載されている。本剤の投与中ならびに投与後においては十分な経過観察が必要であり、本症例のように筋力低下などの異常が認められた場合には、過度の免疫反応による副作用の発現を考慮し、適切な鑑別診断および治療を行うことが重要である。

著者(発表者)
桑原基ほか
所属施設名
近畿大学医学部神経内科
表題(演題)
Nivolumabによる治療中に発症した急性脱髄性ニューロパチーの1例
雑誌名(学会名)
神経治療学 34(6) S203 (2017.11)
第35回 日本神経治療学会総会 (2017.11.16-18)

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