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ジアフェニルスルホンによるHbA1c低値、不顕性貧血

2018年2月掲載

薬剤 ジアフェニルスルホン外皮用薬化学療法剤
副作用 HbA1c低値、不顕性貧血
概要 80歳、女性。水疱性類天疱瘡に対してプレドニゾロン(PSL)とジアフェニルスルホン(DDS)を併用して治療した。入院経過中、ステロイド性糖尿病に対してインスリンおよび経口血糖降下薬を投与し、退院後は近医で経口血糖降下薬のみを継続した。PSL 5mg/日、DDS 50mg/日を維持量として経過観察中に近医での糖尿病治療が終了した。その後、DDSを中止したところ、HbA1c値が突然高値を示した。近医に血糖降下薬の再開を依頼し、その後は血糖値、HbA1c値ともに改善した。経過中のHb値は正常範囲内であり、DDSにより明らかな貧血に至らない程度の不顕性溶血が起こり、HbA1c値が見かけ上低値を示していたと考えられた。

監修者コメント

本症例は、糖尿病を合併した水疱性類天疱瘡にDDSを投与したところ、本剤による見かけ上のHbA1c低値が生じ、糖尿病管理に影響を与えた1例である。HbA1cは糖化Hbの1種であり、過去1-2か月間の血糖値の平均を反映し、食事や採血時間などの影響を受けにくいため、血糖コントロールの指標として広く用いられている。一方で、溶血性貧血などにより赤血球寿命が短縮すると、若いHbの割合が増えるためHbA1cが低下することが報告されている。本症例では、DDSにより明らかな貧血に至らない程度の不顕性溶血が起こり、HbA1cの低下をきたしたと考えられた。糖尿病患者にDDSを投与する際には、貧血に至らなくても、血糖コントロールの指標としてHbA1cの代わりにグリコアルブミンを用いることも検討すべきである。

著者(発表者)
長谷川道子ほか
所属施設名
伊勢崎市民病院皮膚科
表題(演題)
ジアフェニルスルホンにより見かけ上のHbA1c低値を呈した水疱性類天疱瘡
雑誌名(学会名)
臨床皮膚科 71(11) 894-898 (2017.10)

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