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プロピルチオウラシルによる薬剤性肺障害

2013年8月掲載

薬剤 プロピルチオウラシルホルモン剤(抗ホルモン剤を含む)
副作用 薬剤性肺障害
概要 66歳、女性。甲状腺機能亢進症の診断で14年前からプロピルチオウラシル内服投与が行われていた。咳嗽、喀痰を認め、胸部X線と胸部CTで右下葉に浸潤影を認めたため、当院に精査目的で入院となった。プロピルチオウラシル内服を継続しており、Myeloperoxidase-antineutrophil cytoplasmic antibody(MPO-ANCA)が高値であることから、薬剤性ANCA関連血管炎を疑い、入院2日目からプロピルチオウラシルを中止した。入院第9病日に気管支鏡検査にてTBLBを施行したところ、血管炎の所見とorganizing pneumonia(OP) patternを認めた。BALFでは培養でPasteurella multocida を認めた。ABPC/SBT投与とプロピルチオウラシル内服中止により、臨床症状と胸部画像所見の改善を認めた。

監修者コメント

抗甲状腺剤であるプロピルチオウラシルによる合併症としてANCA関連血管炎に伴う肺胞出血はよく知られているが、本症例のように経気管支肺生検(TBLB)でOP patternの病理学的所見を伴う薬剤性肺障害を認めた症例はまれである。また、本症例はペット飼育歴があり、 BALFでは培養でP. multocida を認めたことから、P. multocidaの感染が成立した際の好中球の作用によって、プロピルチオウラシルによるによるMPO-ANCA産生の増幅や肺病変への関与があったことも否定できない。プロピルチオウラシルにおける肺障害の発生機序に、慢性の気道感染によるANCA産生の増幅と肺病変への関与が疑われた1例である。

著者(発表者)
大木隆史ほか
所属施設名
日本大学医学部内科学系呼吸器内科学分野
表題(演題)
右下葉浸潤影を呈しANCA高値が持続したpropylthiouracilによる薬剤性肺障害の1例
雑誌名(学会名)
気管支学 35(3) 265-270 (2013.5)

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