ニボルマブによる筋炎、筋無力症
2017年12月掲載
薬剤 | ニボルマブ腫瘍用薬 |
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副作用 | 筋炎、筋無力症 |
概要 | 74歳、女性。進行直腸癌と診断され直腸離断術を受けたのち、放射線療法のみで経過観察となっていた。その後、保険適応外であったが本人の希望でニボルマブを通常より低用量の10 mgと20 mg、計2回静注された。最終投与5日目から眼瞼の痙攣をみとめ、約2週間の経過で近位筋優位の筋力低下、筋痛、眼瞼下垂、嚥下障害、呼吸苦が出現した。他院入院時の血液検査でCK 5,331 IU/Lと高値であったことからニボルマブに関連する重症筋無力症と筋炎が疑われた。 入院当日より3日間のステロイドパルス療法を行い、後治療として経口プレドニゾロン(PSL)50 mg/日が開始され、最終投与から20日目に当院に転院搬送となった。転院第3病日から免疫グロブリン(IVIG) 400 mg/kg/日を5日間投与したが、低酸素血症が進行し、CO2ナルコーシスとなりQMGスコアも26点まで悪化したため、第9病日から単純血漿交換(1回血漿処理量2,330 mL、5%アルブミン製剤で置換)を計5回施行した。また、CO2ナルコーシスに対して非侵襲的陽圧換気を行い、第12病日ごろより症状は速やかに改善した。経口PSLは50 mg/日を継続し、その後2週間ごとに10 mg/日ずつ漸減、現在20 mg/日を維持量としている。QMGスコアも15点程度まで改善している。 |
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免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブ(オプジーボ®)は悪性黒色腫をはじめとする悪性腫瘍の治療薬として効果をあげている。一方で、副作用として間質性肺炎や重症筋無力症をはじめとした様々な自己免疫疾患を発症することが報告されている。本症例では、ニボルマブの最終投与から約1週間後に筋炎と重症筋無力症を発症し、約2週間の経過で急速に進行したが、血漿交換を行うことで症状の改善を認めた。免疫チェックポイント阻害薬は今後も適応拡大により投与される患者も増加することが予想される。同薬剤の投与後に呼吸苦などの症状を認めた場合には、神経内科専門医へのコンサルテーションを含めた迅速な対応が必要である。
- 著者(発表者)
- 此枝史恵ほか
- 所属施設名
- 東京都済生会中央病院神経内科ほか
- 表題(演題)
- ニボルマブ投与後に筋炎合併重症筋無力症を発症した1例
- 雑誌名(学会名)
- 臨床神経学 57(7) 373-377 (2017.7)
第218回 日本神経学会関東・甲信越地方会
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