モンテルカストによる好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
2017年10月掲載
薬剤 | モンテルカストアレルギー用薬 |
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副作用 | 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 |
概要 | 50歳、女性。2年前より気管支喘息で近医内科に通院しており、1年6ヵ月前に好酸球性肺炎の疑いで入院歴があった。3ヵ月前よりロイコトリエン受容体拮抗薬(LT受容体拮抗薬)であるモンテルカスト(シングレア®)を内服していた。四肢の紅斑、水疱、血疱、紫斑と下肢痛を主訴に当科を受診し、好酸球の増多とMPO-ANCA陽性、好酸球浸潤を伴う白血球破砕性血管炎を認め、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)と診断された。プレドニゾロン内服開始後、紅斑と紫斑は速やかに軽快したが、水疱と血疱の一部が潰瘍を形成した。適宜壊死組織の除去と外用による保存的加療を続け、加療を開始して約2ヵ月でMPO-ANCA値は陰性化した。PSLを漸減し症状の再燃はなく、経過は良好である。 |
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EGPAは先行する気管支喘息、発熱、好酸球増多、全身多臓器における壊死性血管炎を特徴とする疾患であり、以前はChurg-Strauss症候群と呼ばれていた。
近年、気管支喘息の治療薬としてLT受容体拮抗薬を使用する機会が増加しているが、一方で、LT受容体拮抗薬の内服中にEGPAを発症する症例が報告されている。本症例では、モンテルカスト以外に他の喘息治療薬は使用されておらず、モンテルカストの内服が開始されてから好酸球増多が顕著となりEGPA発症に至ったことから、同薬剤がその発症の一因となった可能性が考えられた。LT受容体拮抗薬の内服中に紫斑などの皮膚病変を認めた場合には、副作用としてEGPAの合併も考慮する必要がある。
- 著者(発表者)
- 中尾将治ほか
- 所属施設名
- 石川県立中央病院皮膚科
- 表題(演題)
- ロイコトリエン受容体拮抗薬内服中に発症した好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の1例
- 雑誌名(学会名)
- 皮膚科の臨床 59(5) 569-573 (2017.5)
監修者コメント