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イオパミドールによるKounis症候群

2017年10月掲載

薬剤 イオパミドール診断用薬(体外診断用医薬品を除く)
副作用 Kounis症候群
概要 66歳、男性。椎骨動脈解離治療後のフォローアップとして、造影剤イオパミドールを用いた頭部血管CTを施行した直後、意識レベル低下、血圧低下、全身の膨疹が出現、救急外来に搬送となった。アレルゲンへの曝露後急速に発現したという病歴、皮膚・循環器症状からアナフィラキシーと診断された。
アドレナリン0.3 mg筋肉注射をしたところ、アナフィラキシー症状は改善したが、診療中に胸痛が出現した。心臓超音波検査では前壁に壁運動低下、12誘導心電図では前胸部誘導のST上昇を認めたことから、Kounis症候群と診断した。
イオメプロールを使用した冠動脈造影ではアナフィラキシー症状の再燃は無く、3ヵ月前に留置されたステントの血栓性閉塞を認めたため、経皮的冠動脈形成術を施行した。術後の経過は良好で、第13病日に退院となった。

監修者コメント

Kounis症候群は、アレルギー反応と急性冠症候群が同時に発生する病態であり、アレルギー反応により肥満細胞から放出されたメディエーターにより冠血管攣縮や急性心筋梗塞が引き起こされると考えられている。本症例は、頭部血管CT施行時の造影剤イオパミドールに対するアレルギー反応によりKounis症候群を発症した。造影剤によるKounis症候群では、検査・治療のための冠動脈造影にアナフィラキシーの原因物質である造影剤を使用せざるを得ないが、本症例ではステロイド投与下で経皮的冠動脈形成術を施行することで、アナフィラキシーの再燃を防止することが出来た。Kounis症候群の認知度は低く、正確に診断されずに見過ごされてしまう可能性もあるが、アナフィラキシーの診療中に胸痛などの症状を認めた場合には、本合併症を疑い適切な処置を行う必要がある。

著者(発表者)
須賀将文ほか
所属施設名
神戸市立医療センター中央市民病院救命救急センターほか
表題(演題)
冠動脈形成術を要した造影剤によるKounis症候群II型の1例
雑誌名(学会名)
日本集中治療医学会雑誌 24(3) 341-344 (2017.5)
第43回 日本集中治療医学会学術集会 (2016)

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