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柴苓湯による薬剤性肺炎

2017年8月掲載

薬剤 柴苓湯漢方製剤
副作用 薬剤性肺炎
概要 77歳、男性。白内障の手術後、黄斑浮腫の診断にて柴苓湯の内服治療が開始された。約2ヵ月後より全身倦怠感、咳嗽、微熱が出現し、血液検査にて肝機能障害、胸部レントゲンではスリガラス状陰影が認められ、胸部CTでは気管支血管に沿う形でスリガラス状の濃度上昇が認められた。薬剤性肺炎、膠原病肺、過敏性肺炎などが鑑別に挙げられたが、薬剤性肺炎を最も強く疑い、柴苓湯が原因薬剤の可能性が高いものと考え、内服を中止して症状の改善を確認後、退院し外来で経過観察とした。膠原病、過敏性肺炎は血液検査、および帰宅試験から否定された。その後胸部CTで改善を確認し、リンパ球幼若化試験にて柴苓湯の成分生薬であるオウゴンとサイコに陽性所見が得られ、柴苓湯による薬剤性肺炎と診断した。

監修者コメント

本症例では白内障術後の黄斑浮腫に対して柴苓湯を投与したところ、薬剤性肺炎を発症した。現在、柴苓湯の薬剤性肺炎の原因となる生薬はオウゴンであると考えられている。本症例では、柴苓湯、オウゴンに次いで薬剤性肺炎の報告が多いサイコについてもリンパ球幼若化試験(DLST)を施行したところ、オウゴンとサイコに陽性所見が認められた。柴苓湯による薬剤性肺炎の原因成分として、オウゴンのみではなく、サイコもその候補となる可能性が考えられ、今後のさらなる検討が必要である。

著者(発表者)
山本尚ほか
所属施設名
南部郷総合病院呼吸器内科ほか
表題(演題)
Gaシンチグラムにて著明な取り込み像を呈し、オウゴンとサイコの関与が考えられた柴苓湯による薬剤性肺炎の1例
雑誌名(学会名)
新潟医学会雑誌130(12) 699-705 (2016.12)

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