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サラゾスルファピリジンによる胸膜炎

2017年7月掲載

薬剤 サラゾスルファピリジン化学療法剤
副作用 胸膜炎
概要 44歳、女性。3ヵ月前より多関節痛を自覚し、近医を受診。RF陽性、抗SS-A抗体陽性、抗SS-B抗体陽性よりシェーグレン症候群、関節リウマチと診断され、半月ほど前からサラゾスルファピリジン(SASP)500mgの内服を開始した。来院当日、38度台の発熱を認め、皮疹、前胸部痛と吸気時の呼吸苦も自覚したため、救急外来を受診。初診時、関節炎は見られないものの手指のこわばりを自覚し、全身掻痒感を伴う紅斑、血液検査では血小板減少、肝胆道系酵素の上昇、CRP上昇を認めたため、精査入院となった。
入院翌日、全身の紅斑はやや消褪するも、40度の高熱は持続し前胸部痛は増悪、低酸素血症も出現、胸部CTでは入院時に認められなかった両側胸水と両側下葉の浸潤影が出現し、気管支内視鏡(BF)では喉頭蓋・気管・気管支粘膜に発赤・びらんが散在していた。気管支肺胞洗浄液(BALF)中にリンパ球や好中球増多は確認できなかったが、SASPによる薬剤性アレルギーを疑い、本剤を中止し、経過観察を行った。
第3病日、全身の皮疹は著明に消褪し、胸部痛も軽減、血小板数、肝胆道系酵素と炎症反応も改善し、その後胸水も徐々に減少、酸素化も良好となった。上記臨床経過より、SASPによる薬剤性胸膜炎と診断された。

監修者コメント

サラゾスルファピリジン(SASP)は関節リウマチの治療薬として広く使用されている。SASPの添付文書にも重大な副作用として胸膜炎が記載されており、呼吸困難や胸痛などを認めた場合には投与を中止するように注意喚起されている。SASPによる薬剤性胸膜炎に関するこれまでの報告では、薬剤中止の上、ステロイド投与が行われていたが、本症例では薬剤中止のみで改善を認めており、貴重な一例と言える。

著者(発表者)
伊藤健大ほか
所属施設名
独立行政法人国立病院機構長崎医療センターリウマチ科ほか
表題(演題)
サラゾスルファピリジンによる薬剤性胸膜炎を合併した関節リウマチの一例
雑誌名(学会名)
第61回 日本リウマチ学会総会・学術集会 プログラム・抄録集 663 (2017)
第61回 日本リウマチ学会総会・学術集会 (2017.4.20-22)

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