出生時母子感染予防を実施した小児の化学療法によるB型肝炎再活性化
2017年6月掲載
薬剤 | シクロホスファミド腫瘍用薬 ビンクリスチン腫瘍用薬 ピラルビシン腫瘍用薬 シスプラチン腫瘍用薬 イホスファミド腫瘍用薬 カルボプラチン腫瘍用薬 エトポシド腫瘍用薬 メルファラン腫瘍用薬 |
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副作用 | B型肝炎再活性化 |
概要 | 8歳、女児。母がHBe抗原陽性の無症候性B型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus、HBV)キャリアで、出生時にHBV母子感染予防策が実施された。 1年前、右頸部原発の神経芽腫(INSS分類Stage 2、N-myc増幅ありCOGリスク分類で高リスク)と診断され、5コースの寛解導入療法(シクロホスファミド+ビンクリスチン+ピラルビシン+シスプラチン、イホスファミド+カルボプラチン+エトポシド)ならびに自家末梢血幹細胞移植を含む大量化学療法(メルファラン+エトポシド+カルボプラチン)と局所放射線療法を行った。 化学療法開始前の検査では、HBs抗原陰性、HBs抗体陽性、HBc抗体陽性でHBVの曝露が確認された。治療初期のHBV DNA定量検査も感度以下であった。治療開始7ヵ月時点でHBs抗体とHBc抗体は陰転化し、9ヵ月目(自家末梢血幹細胞移植後4ヵ月)時点でHBV DNA 3.6log copies/mLと陽転化した。 エンテカビル0.015mg/kg/日で治療開始2週間後にHBV DNAは陰転化し、6週間後にHBs抗体の再陽転化を確認した。 |
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免疫抑制や化学療法によりHBVが再活性化することで発症する肝炎をde novo肝炎と呼んでおり、重症化、慢性化しやすいことが報告されている。本文献では出生時に母子感染予防策が実施されたもののHBVの曝露が確認され、神経芽腫に対する化学療法によりHBVの再活性化を認めた症例を報告している。小児においてもHBV再活性化が起こりうるため、免疫抑制や化学療法を行う際には、定期的なHBV感染のスクリーニングを行うことが重要である。
- 著者(発表者)
- 古寺一樹ほか
- 所属施設名
- 新潟大学小児科学教室
- 表題(演題)
- 母子感染予防実施後に神経芽腫に対する化学療法を契機としたB型肝炎再活性化の一例
- 雑誌名(学会名)
- 日本小児科学会雑誌 121(2) 237 (2017.2)
第120回 日本小児科学会学術集会 (2017.4.14-16)
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