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輸血による急性肺障害

2017年5月掲載

薬剤 濃厚赤血球生物学的製剤
新鮮凍結血漿生物学的製剤
副作用 急性肺障害
概要 70歳代、男性。左上葉肺癌に対する切除術を目的に入院した。術後より貧血の進行を認めたため、赤血球濃厚液(RCC)2単位と新鮮凍結血漿(FFP)2単位を輸血したところ、施行4時間後に悪寒・呼吸困難を訴え、呼吸状態は急激に悪化、人工呼吸管理となった。
急激な呼吸状態の悪化と、洞不全症候群の既往に対し内服していた抗凝固薬の中止期間があったことから、肺塞栓症が疑われた。CTでは肺動脈内の血栓は認められず、心エコーにおいても、EF 64%と心収縮機能は保たれ、推定肺動脈楔入圧も14 mmHgと上昇はなく、また左心負荷も認めず、心原性肺水腫は否定的であった。経過、臨床・画像所見より輸血関連急性肺障害(TRALI)と診断され、ステロイド投与を開始した。呼吸状態は改善し、治療開始2日後に抜管された。

監修者コメント

輸血関連急性肺障害(transfusion-related acute lung injury: TRALI)は、輸血後6時間以内に新たに生じる急性肺障害で、非心原性肺水腫を主病態とし、急性呼吸不全をきたす重篤な輸血合併症である。発生機序は明らかではないが、ドナー血液中の白血球抗体もしくは長期保存した赤血球製剤や血小板製剤中の活性物質が原因という説がある。FFPは抗白血球抗体を含む血漿に富むため、TRALI発症のリスクが高いという報告があり、本症例でもFFPが使用されていた。輸血後に急性呼吸不全を認めた場合には、本合併症を鑑別疾患の1つとして検討する必要がある。

著者(発表者)
高見康景ほか
所属施設名
香川大学医学部放射線医学講座
表題(演題)
輸血関連急性肺障害(TRALI)の1例
雑誌名(学会名)
臨床放射線 62(1) 209-213 (2017.1)

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