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エキセナチドによる低血糖

2013年6月掲載

薬剤 エキセナチドホルモン剤(抗ホルモン剤を含む)
副作用 低血糖
概要 59歳、男性。40歳頃に糖尿病を指摘され、45歳より内服薬開始。通勤中に突然心肺停止状態となったが、一命をとりとめた。その後特発性心室細動の診断で埋め込み型除細動器を移植した。この頃から強化インスリン治療が開始された。4ヵ月後にインスリンを止めたいとの希望があり、当科入院となった。内服薬は、カンデサルタンシレキセチル、ジルチアゼム塩酸塩、ソタロール塩酸塩、ワルファリンカリウム、アトルバスタチンカルシウム水和物で、入院時の血糖コントロールは良好であった。入院直後からCGM(Continuous glucose monitoring)を開始し、6日間血糖変動を観察した。入院翌日の夕から超速効型インスリン、持効型溶解インスリンを中止して、エキセナチド皮下注(朝5μg、夕5μg)を開始し、翌日からグリメピリドの投与を予定した。エキセナチド投与2時間後に手指震戦、発汗などの低血糖症状が出現したためにグリメピリドの投与は中止した。この時の血糖は40mg/dLであったが、翌朝は投与2時間後に48mg/dLまで低下し、自然回復したものの午後は高血糖が持続した。夕方の投与後は70mg/dLまで低下した。3日目からは血糖低下は起きなくなり、昼間の高血糖の時間も少なくなった。

監修者コメント

エキセナチドはGLP-1受容体作動薬であり、単独投与では低血糖を起こしにくい糖尿病治療薬として注目されている。本症例では、糖尿病患者に対して強化インスリン療法を行い、良好なコントロールが得られていた後にエキセナチドへ変更したところ、急激な血糖低下を認めた。著者は良好な血糖コントロールが得られたことにより、膵β細胞のインスリン分泌が改善し、さらにGLP-1感受性が回復してエキセナチドの開始直後に過剰なインスリン分泌が引き起こされて低血糖が起きたのではないかと考察している。本症例のように血糖コントロールが良好となり、インスリン分泌能が残存あるいは回復している場合は、インスリンからGLP-1受容体作動薬に切り替えた後数日間は低血糖出現の可能性があるため、連続血糖測定システム(CGM)などを用いた観察が必要である。

著者(発表者)
徳山芳治ほか
所属施設名
医療法人柏葉会柏戸病院内科
表題(演題)
エキセナチド単独投与後の低血糖をCGM(Continuous glucose monitoring)にて観察しえた2型糖尿病の1例
雑誌名(学会名)
糖尿病 56(2) 81-86 (2013.2)

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