ダントロレンナトリウムによる胸水
2017年4月掲載
薬剤 | ダントロレンナトリウム末梢神経系用剤 |
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副作用 | 胸水 |
概要 | 52歳、女性。出生時に新生児仮死が持続し、その後脳性麻痺と診断され、長期入院中の重症心身障害者である。X-1年1月から数週間に1回嘔吐があり、その都度腹部X線検査を行ったが、嘔吐の原因となる所見はなく、経過観察をしていた。X年1月より嘔吐の頻度が週1回程度に増え、胸部X線検査にて右側胸水を認めた。感染症や悪性腫瘍などを疑い精査したが、いずれも否定的で、末梢血好酸球の増多と胸水中の好酸球増多を認めたことから何らかのアレルギー機序に基づく胸水を疑った。内服薬の中に薬剤性肺障害の原因となりうる薬剤がないか検討したところ、全身の筋緊張亢進に対しDantrolene sodiumを27年間使用していたことが判明した。本剤による薬剤性胸水を疑いすみやかに中止したところ、胸水は改善傾向となり、胸水減少に伴って嘔吐の頻度は減少した。 |
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ダントロレンは末梢性の筋弛緩剤であり、脳卒中後の痙性麻痺や悪性症候群の治療薬として用いられている。本文献では、重症心身障害者の全身の筋緊張亢進に対してダントロレンを27年間使用したところ、同薬剤による薬剤性胸水を合併した症例を報告している。ダントロレンは重症心身障害児者の診療で日常的に使用されている。本薬剤の使用中に原因不明の胸水を認めた場合は、稀ではあるが薬剤性胸水の可能性も念頭において、検査および治療を進める必要がある。
- 著者(発表者)
- 上野知香ほか
- 所属施設名
- 国立病院機構東佐賀病院小児科
- 表題(演題)
- Dantroleneによる薬剤性胸水と診断した重症心身障害者の1例
- 雑誌名(学会名)
- 日本重症心身障害学会誌 41(3) 417-421 (2016.12)
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