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プロチレリン酒石酸塩による下垂体卒中

2016年12月掲載

薬剤 プロチレリン酒石酸塩中枢神経用薬
副作用 下垂体卒中
概要 60歳、男性。脊髄小脳変性症(SCD)と診断され、頭部MRI検査にて偶然トルコ鞍内に下垂体腫瘍が見つかった。精査の結果、無症候性の下垂体腺腫と診断された。SCDに対してのプロチレリンの初回投与の際、点滴後に急激な頭痛が出現し、引き続き進行性の右動眼神経麻痺が出現した。当院へ転院となり、下垂体卒中と診断された。その後、動眼神経麻痺が改善傾向となり、血腫も小さく、頭痛等の自覚症状も消失し、経過観察にて腫瘍の消褪も確認された。

監修者コメント

プロチレリン酒石酸塩(ヒルトニン®)は、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)製剤であり、SCDにおける運動失調の改善などに使用されている。ホルモン負荷試験が下垂体卒中を誘発することはこれまでにも報告があるが、本症例のように、SCDに対する治療目的で投与されたプロチレリンにより、合併した下垂体腺腫に下垂体卒中を発症した症例は極めて稀である。下垂体偶発腫は成人の約10%に認められるとの報告もあり、本薬剤を治療薬として使用する場合は、下垂体腫瘍の合併を確認することが重要である。

著者(発表者)
福原紀章ほか
所属施設名
虎の門病院間脳下垂体外科
表題(演題)
脊髄小脳変性症に対するTRH治療中に下垂体卒中をきたした一例
雑誌名(学会名)
第17回 日本内分泌学会関東甲信越支部学術集会 プログラム・抄録集 68 (2016)
第17回 日本内分泌学会関東甲信越支部学術集会 (2016.9.9-10)

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